動物の再生医療を研究するアニコム先進医療研究所は、9歳以上の犬36頭を対象に、皮下脂肪由来の他家間葉系幹細胞をして1カ月後の変化を調べた。ちなみに、間葉系幹細胞とは、骨や軟骨、血管、心筋細胞に分化できる細胞のこと。つまり、組織の再生や血行改善などの作用がある。「他家」とは、自分由来ではないこと。ほかの犬から採取した細胞を培養したものだ。
その結果、36頭中の8割にあたる30頭に、11項目でなんらかの改善が見られた。とくに明確だったのが食欲の改善だ。投与前に食欲不振だった9頭と、食事介助が必要だった2頭は、すべてに改善が見られた。また、介助なしでは立てない、歩きたがらない、段差が上れない、散歩などで疲れやすいという犬は、半数以上に改善があった。ただし、表情が辛そう、毛づやが悪い犬については、あまり改善されなかった。下の動画は幹細胞を投与した15歳柴犬の歩行改善の様子。
一部には医療費の改善も見られた。11歳以上の12頭のうち10頭は、幹細胞の投与後半年間の動物病院の診療費が低減した。通常は歳を取るにつれて医療品も上がるのがのだが、むしろ減っているのは驚きだ。
「幹細胞投与には若返りの効果があると言えるのではないかと考えられます」とアニコム先進医療研究所は話しているが、過剰な期待は禁物だ。事実、歩きたがらない、毛づやが悪い犬の一部には悪化が見られる。あくまで、たくさんの幸せをくれた愛犬が、残りの時間を少しでも楽しく暮らせるようになる手段として研究の行方を見守りたい。
プレスリリース