家族経営がぶれない基盤をつくる
さらにノルケインは、かつてのスイス時計産業では当たり前だった家族経営をモットーとし、ベンの実弟であるトビアス・カッファーがバイスプレジデントを務める。「今、我々が大切にしているのは、作り手とユーザーとが情熱を共有していくこと。我々の時計に対する思いやビジョンを共有していくことで、ノルケインの時計に感情移入してもらう。そしてノルケインを通じて人々のクオリティ オブ ライフを引き上げていきたい。いまの若い世代は、スマートウォッチのユーザーが多い。だからこそ時計の裏側にある価値をしっかり伝えていく必要があるでしょう。
我々は家族経営なので、何かをやろうとするときに、長期的な視点に立って戦略を決めることができる。今年の結果だけじゃなくて、5年後、10年後、もっとその先のために投資できるのは、大きな強みです。しかもノルケインは僕の両親や兄弟、妻たちも関わっているので、ブランドのアイデンティティがぶれることはありません」とトビアス。自分たちの理想を貫きたい。そのためにノルケインは、グループ傘下ではなく、独立した存在であり続けるのだ。
さらに2024年は、世界最大の時計イベントである「ウォッチズ アンド ワンダーズ」にも参加する。
「創業して6年の若いブランドがこのイベントに参加できるということは、スイス時計業界が我々を必要なブランドであると判断してくれたということでしょう。我々にとっては。サッカーのチャンピオンズリーグのようなもの。リテーラーやメディアとの新しいコミュニケーションの場にしたいですね」とベン・カッファーは前を向く。
10年後20年後も、情熱を貫いていきたいという彼らは、伝統的なスイス時計の世界に新鮮な刺激を与え続ける存在となっているようだ。
ノルケインが世に問う、2つの新作ウォッチ
優れた技術を持つスイスのサプライヤーとのパートナーシップから生まれた「ワイルドワン」は、ノルケインの先進性を表現したモデル。軽量で頑強な独自素材である「NORTEQ(ノルテック)」を使用することで、5000Gもの衝撃にも耐えうるスポーツウォッチを実現した。複雑なケース構造は25のコンポーネントで構成されており、制作するために13種類の工具が必要となる。それだけ高度な時計でありつつ、ケニッシ製の高性能ムーブメントCal.NN20/1を搭載しており、高精度の公的認証であるCOSC認定クロノメーターを取得し、約70時間のロングパワーリザーブも実現。実用的なモデルに仕上がっている。ベン・カッファー◎NORQAIN(ノルケイン)創業者兼CEO。1988年、スイス・ビエンヌ出身。スイスの高級時計製造会社を営む一家に生まれる。ブライトリングでブランドマネジャーとして勤務し、アジア全土を担当するエリアセールスマネジャーを4年間兼務。2018年にノルケインを創業し、現職。高い品質と適正な価格、そしてスイス伝統の時計文化の継承を強く意識した時計作りを行う。
トビアス・カッファー◎NORQAIN(ノルケイン)バイスプレジデント。1990年、スイス・ビエンヌ出身。兄同様、スイスの高級時計製造会社を営む一家に生まれ、2013年にルイ・エラールに入社して時計業界でのキャリアをスタート。様々なブランドにて、主にセールス部門でキャリアを積み、2021年の5月から現職。