「路面に埋め込む発電装置」を開発した英スタートアップが注目される理由

日下部博一
エドモンドソンベネットは、軍が自社の技術を利用する可能性にも期待を寄せており、輸送部隊が移動中に発電して部隊に電力を供給するような状況を想定している。同様に、電力とインフラが同時に必要とされる災害救援のシーンでも、同社の技術を展開できる可能性がある。

とはいえ、ルーテはまだ理念を利益につなげる過程の初期段階にある。同社は現在、本社近くに設置しているデモ施設でアイデアを披露することで、自社の技術が機能することを証明しているが、契約に至った有料顧客はまだほんの一握りだ。

しかし、エドモンドソンベネットによると、世界中の顧客から寄せられるルーテの技術に対する需要は高まっているという。「欧州や中東、北米の大企業と交渉している。可能性は非常に大きい」。同社への関心は、持続可能性に関する同社の実績によっても高まっている。エドモンドソンベネットは、国連の持続可能な開発目標のうち少なくとも11の目標にプラスの変化をもたらしていると指摘し、自社を「インパクトのあるスタートアップ」と表現した。

ローンや貸付金を投入して起業したエドモンドソンベネットにとって、さらなる有料顧客との取引を獲得することは確かに追い風となるだろう。その一方で、ルーテの開発チームは技術の応用にも取り組んでいる。

ひとつの目標は、大型車両よりも高速で走行する小型車両からエネルギーを回収できるシステムの設計だ。実現すれば、駐車場やショッピングセンター、広範にわたる道路交通システムに技術を提供できるようになる。

同社はまた、1万頭の乳牛を飼育する米国の農場など、農業経営者とも交渉中だ。「搾乳のために乳牛は毎日、行ったり来たりさせられている」とエドモンドソンベネット。「牛の群れのエネルギーを、大型車両とまったく同じ方法で取り込むことができ、発生した電気は農場に使うことができる」と説明する。

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのエネルギー研究所でエネルギーと建築性能を専門とするポール・ルイセべルト教授は、英国をはじめとする国々が気候変動を緩和するための野心的な目標を達成するには、この種のイノベーションが不可欠だと言う。温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「ネットゼロ」の実現には、現在注目されている再生可能エネルギーシステムを超えるソリューションへの投資が必要だと主張する。

「さまざまな技術、新しい政策、新しい法律、新しいインセンティブ、全面的な新規投資など、あらゆるアプローチが必要だ」とルイセべルト。「建造環境やインフラに組み込まれたシステム、つまり再生可能エネルギーやエネルギー回収システムを統合した構築物が果たす役割は非常に大きい」とも指摘する。ルーテはその一翼を担おうとしている。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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