今年で3回目の開催を迎えた「Forbes JAPAN CIO AWARDーin Partnership with Lenovo」は、テクノロジー時代に企業の成長を加速させる、卓越したCIOたちに注目している。
今回受賞したリーダーは、ビジネス戦略の中核を担うまでに進化しており、CIOが単なる技術の専門家から、企業の将来をかたちづくる戦略家へ変貌している。
加えて、それぞれの個性は強く、まるで「カスタマイズされたテックリーダー」と言える姿だ。カスタマイズ、その意味は大きく3つの特徴で示される。
ひとつは、役職の在り方だ。現代のCIOは、CDO、CTOなどのほかのCスイートとともに技術・テクノロジー領域の戦略をけん引する立場にあるが、昨今、その役割は企業によって柔軟な位置付けになっている。DX、サイバーセキュリティ、AIなど、絶えず変化するトレンドに横断的に対応することが必要になっているためか、今回の受賞者は必ずしも「CIO」ではないし、一部はその名称ですらない。これは、デジタル変革の大義のもとで、個々の業種や強みに合った役割が求められ、それに呼応していることを表す。
そしてテックリーダーは「CEO」に並ぶ価値と役割をもつ、というのがふたつ目の特徴だ。今や、企業のデータを一手に司る要職は、経営の意思決定にかかわる存在になった。情報技術の管理者にとどまっていたCIOは、進化するデジタル技術の導入からデータ駆動型の意思決定のサポートに至るまで、大きな責務を担うまでに変化し、ビジネスとテクノロジーの架け橋としてその役割を果たしている。そしてコロナ禍によって多くの企業がデジタル変革を再認識させられ、データの重要性とその活用が一足飛びにバージョンアップした。その後、AIの進化を迎えることで、CIOはデータの番人に君臨することになる。
しかし、本アワードを専門的な立場でサポートするレノボ・ジャパン代表取締役社長の檜山太郎は課題を示す。
「日本企業のデータ活用は間違いなく前進しています。しかし、世界に目を向ければその余地はまだまだ広い。国内外のPC市場でトップシェアをもつ私たちは常にCIOをはじめとした多くのテックリーダーと接点をもたせていただいており、彼らの言葉を聞いています。そこには、これから先の改革を感じることができる。このアワードは、まさに『進化の過程』を邁進している日本のCIOに光を当て、世界に伍するテックリーダーが輩出される土壌になればという願いがこめられています」
経済規模を鑑みれば、日本で扱われるデータ量は圧倒的で、「世界で3本の指に入る」(檜山)という。この活用が鍵となるが、少なくとも企業がもつ膨大なデータの活用は決して進んでいるわけではない。
3つ目は、人材だ。これは本アワードでひとつのテーマとなった。テックリーダーは「外から来るべきなのか」という点だ。
テクノロジー企業で実績を積み、データ活用からAIまで網羅した外部人材を招聘し、DXを加速させる。これはひとつの成功事例となっている。グランプリを受賞した中外製薬の志済聡子もIBMを経てジョインした。受賞企業のトリドールの磯村康典も実績を積み入社している。
しかし日本企業の場合、外部人材が必ずしもDXの成功の道ではないことも示している。社内から昇格するCIOは、組織の文化やビジネスプロセスを深く理解している。「どこにいちばん分厚い壁があるかがわかる」と指摘するのは受賞企業味の素の香田隆之だ。彼も生え抜きだ。また、同じくパソナグループの河野一も生え抜き人材として同社のDX化に尽力し、テックリーダーとしてついぞ徳島本社機能移転を成功に導いたひとりとなっている。また、日本郵船の高橋泰之は同社グループの別会社で重要なロジスティクスに携わったがゆえに、グループ全体を俯瞰できたという。
本アワードで明確になったテックリーダーの姿は、企業それぞれの特徴に合った、「カスタマイズ」されたリーダーだろう。日本のテックリーダーは、さらなるカスタマイズを経て、世界に並ぶDX推進者になることを期待したい。