爆弾や地雷の投下に活用
ウクライナ軍は以前から、長距離偵察機としても爆撃機としても、DJIのMatrice 300といった大型ドローンを広く活用している。しかし、Matrice 300の最大積載能力が約2.7kgであるのに対し、FlyCart 30は最大約30kgのペイロードを搭載できる。他メーカーの重量物の運搬用ドローンがはるかに高価で、操作が難しいのに対し、低価格でこの性能を実現したFlyCart 30は、画期的なプロダクトだと言える。このドローンを用いれば、軍はより多くの爆弾や地雷を、低コストで投下することが可能だ。
DJIが、FlyCartの軍事利用を防ぐためにジオフェンシングなどの対策を取り入れることは間違いないが、Mavicsの場合と同様に巧妙な軍のオペレーターはすぐにそれを回避するだろう。
一方、米軍用ドローンメーカーのAeroVironment(エアロビロンメント)は最近、同社のマルチコプターVapor 55からのGPS誘導シュライク弾の投下テストに成功したと発表した。しかし、Vapor 55の最大積載能力は、FlyCart 30の約5分の1の約5kgだ。FlyCart 30は装甲車を破壊するのに十分な威力を持つ武器を搭載し、1回の出撃で何十回もの精密攻撃を行うことが可能だ。
さらに、このドローンの積載能力があれば、バドゥーガ・ライフル・システムのように、60発の弾丸を搭載した高威力のライフルを搭載して、200メートルの距離から人間大の標的を正確に撃つことも可能だ。ライフルと弾薬がセットになったバドゥーガ・ライフル・システムの重量は9kg以下とされている。
FlyCart 30はまた、複数のFPV(1人称視点)攻撃ドローンの母艦となるドローンキャリアとしても機能する。ウクライナもロシアもこのコンセプトの実験を行っているが、手頃な価格で重量物も運搬が可能なドローンがあれば、大いに役立つことは確実だ。
DJIが配達用ドローンの巨大な世界市場を見据えていることは疑いようがなく、特にウィンチシステムは、緊急物資の運搬やレストランのデリバリーでも役立つはずだ。しかし、ドローンによる配送サービスが法規制の壁に直面し、なかなか軌道に乗らない一方で、軍事用ドローンのオペレーターは、合法であろうとなかろうと、このテクノロジーを最大限に活用しようとしている。
(forbes.com 原文)