サイエンス

2024.01.18 18:00

古代メソポタミアの煉瓦が明らかにした「地球磁場の年代変化」

紀元前575年、新バビロニア王国のネブカドネザル2世により建造された「イシュタル門」の一部(Getty Images)

地球磁場の長期間にわたる変化を地図上に詳細に示すことで、考古学者らはこのデータを、古代遺物の年代決定に役立つ新たなツールとして利用できる。年代が不明な焼成遺物に含まれる酸化鉄粒子の磁場強度を測定すれば、過去の地球磁場強度の既知のデータと照合することができる。それぞれの王の在位期間は数年から数十年であることから、遺物の年代を数百年の精度でしか特定できない放射性炭素年代測定法に比べて、より高精度な年代決定が可能だ。
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論文の筆頭執筆者で、米ウィチタ州立大学の教授を務めるマシュー・ハウランドは「古代の遺物と、古代の地球磁場の状態について明らかになっていることを比較すれば、古代に加熱された遺物の年代を推定できる」と説明している。

地球磁場が局所的に強まったり弱まったりするような異常は、近い将来に地球磁場により大規模な変化が起きる証拠の可能性があると見なされることが多い。NASAによると、地球磁場のN極とS極(磁極)が入れ替わる現象は、地球史の中で何度も発生しており、過去8300年間で少なくとも183回の磁極反転が起きている。今回分析した試料のうち、ネブカドネザル2世の在位期間(紀元前604~紀元前562年)中のものである5点では、地球磁場が劇的に変化したように見えるが、その後間もなく正常レベルに戻ったことを、研究チームは明らかにした。

論文の共同執筆者で、米スクリップス海洋研究所の教授を務めるリサ・トークスは「地球磁場は、地球科学で最も謎めいた現象の1つだ。正確に年代決定された、豊かなメソポタミア文化の考古学的遺物とりわけ明確な王の名前が刻まれた煉瓦は、地球磁場強度の変化を高い時間精度で調査し、数十年あるいはそれ以下の間に起きた変化を追跡するための前例のない機会を提供する」と結論づけている。
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今回の論文「Exploring geomagnetic variations in ancient mesopotamia: Archaeomagnetic study of inscribed bricks from the 3rd–1st millennia BCE」は、米国科学アカデミーの機関誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」に掲載された。追加資料とインタビューは、英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジより提供された。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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