経済

2024.01.18 12:00

イランとロシアがたきつける「紅海危機」、世界のエネルギー市場の脅威に

影響は海運にとどまらず、エネルギー価格にもおよぶ。複数の原油を混合したブレンド原油の相場は、今回の危機の勃発後、おおむね7〜10%上昇している。投機筋の間では、3月までに30%程度上昇すると見込む向きが多い。

海上保険料も跳ね上がり、輸送、投入、供給にかかるコストはすべて高騰している。また、新型コロナウイルス禍を経て「ジャスト・イン・タイム」モデルを脱却し、あらためてレジリエンシー(強靭さ)を重視するようになったとされるサプライチェーン(供給網)にも、大きな混乱が生じている。

たとえば、米テスラは部品不足のためドイツで生産の一時停止に追い込まれた。中国の浙江吉利控股集団傘下のボルボ・カー(スウェーデン)も欧州で同様の事態に陥った。カタールの国営エネルギー会社カタールエナジーは、紅海経由の液化天然ガス(LNG)船の運航停止を余儀なくされている。

イランとロシアによる経済戦争の成功を許せば、原油をはじめとする商品の価格は押し上げられ、輸送費はとんでもなく高くなり、世界経済はリセッション(景気後退)に追いやられかねない。さらに悪いことに、人々はコロナ禍中のようなサプライチェーンの混乱と、コロナ禍後の景気回復期の大半を特徴づけたインフレの再燃が重なるという、悪夢のような事態に耐えねばならなくなるだろう。この経済戦争の成功を許してはならないのだ。

問題を解決するには、現実を直視し、ごまかしをせず評価する必要がある。イランやフーシ派、ロシアは、歴史、宗教、イデオロギーの対立が絡んだ複雑な経緯から、イスラエルや米国、そして西側全体を破壊したいと目論んでいる。西側の政策立案者がこの経済戦争の脅威を認識したり伝え合ったりせず、正面からしっかり取り組まなければ、ロシアとイランを成功させる結果になってしまうだろう。

西側は米国がフーシ派のテロ組織指定を解除する(編集注:17日に再指定が発表された)など、長年にわたってイランやフーシ派を甘やかしてきたが、うまくいかなかった。イランは不倶戴天の敵である。その代理勢力であるフーシ派は、あらゆる手段を用いて無力化すべきだ。

海賊行為や私掠船は古来、共和政ローマから大英帝国など、開かれたグローバル・コモンズ(国際公共財)を維持したい勢力によって厳しく取り締まられてきた。フーシ派の力をそげば、イランに行動を再考させ、中東全体に火を広げるのを思いとどませることができるかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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