一番のメリットは、コスト削減になることです。バーチャルヒューマン生成のためには初期コストこそかかりますが、VTuberのように実在の人物がリアルタイムにキャラクターを動かして活動するわけではなく、AI技術をつかってコミュニケーションを行うので、稼働コストがかかりません。あとは同じ理由で、24時間働けます。
2023年10月に伊藤園が日本で初めてCMにバーチャルタレントを起用して話題になりました。最近ではリアルタレントを採用した広告よりクリック率が2倍になったというデータも出ていて、新しくバーチャルタレントをつくって広告に起用したいという企業が増えています。
——バーチャルタレント事務所を経営していくうえで、課題はありますか。
バーチャルヒューマンの領域では、権利問題が課題になっています。リアルで存在するタレントのバーチャルヒューマン版をつくった場合は、その利権をどうするのか。これは、本人が所属している事務所とは切り離して考える必要があり、議論されているとことです。
技術的な面での懸念もまだまだあります。例えば、学習データのコントロールの難しさです。現状は、バーチャルタレントが生放送で突然誰かの悪口を言ったり、不適切な言葉を発したりしてしまう可能性があります。我々は、そういうことが起きないように開発を進めていきます。
また、会話のキャッチボールの難しさも課題です。現在は、例えばリアルタイムのライブ配信では、視聴者のコメントに対応する時だけリアルな人間が学習データで取り込んだ「声」で応えているような状態です。
——「ぴにょきお」の代表として、今の目標は。
今後、バーチャルヒューマンが定着してきたときに競合に勝つには、「バーチャルヒューマンと言えばこの子」というタレントをつくっておく必要があります。すでに動いているのですが、2024年はそれに注力していきたいです。
これからは、優秀な人は個人で勝ち上がっていく時代だと思うんです。現在は、歌がうまくてコミュニケーションスキルが高いアイドルの方でも、年齢的に「旬」が過ぎたからと表舞台からは引退して、VTuberをしているような人が少なくありません。
バーチャルタレントなら、年齢や見た目の変化は関係なく「旬」を維持し続けられます。アイドルやタレントで、引退後のセカンドライフを考えているような人にとっても、ベストな選択になるのではないかと思っています。