100兆円企業誕生のきっかけづくり
赤浦が自らのミッションを定めたのは、1997年3月。「『21世紀のソニー、パナソニック、トヨタ、ホンダ』が生まれるきっかけをつくる」だ。こうした宇宙をはじめとした新産業の創出に全力を注ぐのは「IT業界に投資をしてきたが、投資先から時価総額1兆円企業が生まれていない」ことへの自戒もあるからだ。そして、日本経済の現在地について「失われた30年」から「次の30年」に向けた変化が起きる転換点だと位置付けてもいる。だからこそ、ispaceが上場後の4月26日に、民間企業として世界初の月面着陸に挑み、あと一歩のところで未完に終わったとしても、赤浦は「継続支援」の姿勢を崩さない。その先にある産業化を見据えているからだろう。すでにインキュベイトファンドの宇宙関連の投資先は8社にものぼり、複数企業間で取引関係が生まれるなど、その萌芽も出てきている。であるがゆえに、赤浦の野望は壮大だ。
「現在、トヨタの時価総額は46兆円程度。ミッションを実現させるためには、少なくとも10兆円企業を、そしてその先の100兆円企業をつくらなければならない」
夢の話のようにも聞こえるが、「何がなんでも絶対にどうにかする」を信条に投資家人生を歩んでいる赤浦ならばそれすらも実現できるかもしれない。
あかうら・とおる◎インキュベイトファンド代表パートナー。1991年ジャフコ入社。99年にVC事業を独立開業し、以来一貫して創業期に特化した投資育成事業を行う。2010年にインキュベイトファンド共同創業。「日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング」2024年版ではキャピタルゲイン200億円(編集部推計)で1位に輝いた。