FRBも、現在の金利がピーク水準であると認識している。2023年12月に開催され、2024年1月に公開された連邦公開市場委員会(FOMC)の会合議事録には、以下のような記述がある。「政策の展望を議論するなかで、参加者たちは、現在の緊縮サイクルにおいて政策金利がピークまたはそれに近い水準にあるという見解を示した。ただし、実際にどのような政策をとるかは経済状況の展開次第であるとも述べた」
だが、市場は現在、FRBにやや先行して利下げ予測に傾いている。2023年12月に出た直近の経済見通し(SEP)によれば、2024年12月末までのFRB短期金利予測の中央値は、4.5%をわずかに上回るものとなっている。一方、債券先物市場は、同時点までに金利が4%を切るという見方を示している。FRBはこれまでのところ利下げの詳細に関する議論を避けているが、1月の会合でこうした議論が行われる可能性はある。
インフレの沈静化
インフレ率は、ピーク水準からかなり低下した。1月11日に発表された2023年12月の消費者物価指数は、前月よりも伸び率が加速したものの、インフレ率は概してFRBの年間目標である2%に近づきつつある。例えば、FRBが重視する指標である個人消費支出(PCE)価格指数は、直近の2023年11月の数値では前年同月比2.6%増、食品・エネルギーを除いた場合は3.2%増となっている。このように、インフレ指標は2023年夏以降沈静化が続いている。
サービス価格については期待されたほどの落ち着きを見せていないため、FRBは引き続き注視していく姿勢だ。その一因は、高金利にもかかわらず、雇用市場が堅調であったことだ。多くのサービス産業において、人件費はかなり大きな要素だ。しかし、その他の分野ではインフレは沈静化している。
賃金の上昇さえ減速しつつあることが、アトランタ連銀の賃金上昇トラッカーから見てとれる。2023年11月の賃金上昇率は年5.2%であり、2023年夏のピークに記録した6.7%から低下している。
ただし住宅支出は、高金利に呼応して減少するという予測もある。消費者物価指数(CPI)は、算出方法の関係で、こうした変化にタイムラグが生じ得る。
成長と雇用
この分野の動向は、多くの点で異例だった。なかでも、高金利にもかかわらず、雇用市場が概して堅調を保ったことは注目に値する。米国の失業率は2023年を通じておおむね横ばいで、1月の3.4%から12月の3.7%まで推移した。新規雇用も概して堅調を保ち、高金利から予測された軟化を見せることなく、2023年の米国経済には一貫して雇用が生まれ続けた。
このことはFRBにとって、経済が冷え込んだ場合にインフレの再燃をもたらし得るという意味で、若干の懸念材料となる。アトランタ連銀のGDPNow予測は、2023年第4四半期のGDP成長率を2.5%としており、第3四半期の4.9%という急成長からの鈍化がうかがえる。
今後の焦点
金利据え置きが長く続くなか、2024年の焦点は、いつ利下げが実施されるかだ。これまでのところFRBは、今後の利上げの可能性を強調することを控えるだけにとどめている。FRBは依然として、近々利下げを実施するという兆候を見せておらず、2024年末までに金利は低下するだろうという全体的な見通しを示しているだけだ。市場は、FRBの1月会合から新たな手がかりを見いだそうとするだろう。市場の予測では、FRBは3月以降、インフレの沈静化を受けて段階的な利下げに着手する可能性が高いとされる。だが、FRBはこれまでのところ、どんな選択肢も除外していない。
(forbes.com 原文)