欧州

2024.01.15 14:00

ウクライナ軍、ロシア空軍最高の指揮統制機2機を撃墜か

ロシア空軍のベリエフA-50早期警戒管制機。2012年8月、モスクワ州ジュコフスキーで(Fasttailwind / Shutterstock.com)

ロシア空軍のベリエフA-50早期警戒管制機。2012年8月、モスクワ州ジュコフスキーで(Fasttailwind / Shutterstock.com)

ウクライナ空軍が14日、ロシア空軍のベリエフA-50早期警戒管制機とイリューシンIl-22空中指揮機を撃墜したと報じられている。A-50とIl-22はロシア空軍で最も貴重な指揮統制機だ。

ウクライナのRBCラジオは、Il-22の搭乗員から発せられた救難信号の音声記録とされるものを公開している。搭乗員はロシア南部のアゾフ海近くの都市アナパにいるらしい管制官に対して「救急車と消防隊員(の手配)を至急求める」と要請している。

Il-22は少なくとも損傷はしたもようだ。オンライン紙のキーウ・インディペンデントは、14日夜にアゾフ海沿岸で攻撃に遭ったと報じている。

Il-22はエンジンを4機積んだプロペラ機で、最大10人を乗せ、無線信号を中継したり前線の作戦を調整したりする機能をもつ。昨年6月、ロシアの傭兵組織ワグネルが反乱を起こした際にロシア西部で1機を撃墜し、残りわずか30機になっていた。

Il-22も貴重で高価な航空機だが、それよりも希少なのがA-50だ。エンジン4機搭載のジェット機であるA-50は、米軍のボーイングE-3早期警戒管制機に対抗して開発された。機体上部に取りつけられたレドームに全方位を監視する回転式レーダーを搭載し、400km離れた航空機を探知できる。15人の搭乗員は敵機の追跡や味方機の飛行の調整にあたる。

ロシア空軍が保有するA-50と改良版のA-50Uは合計でたった9機だ。うち1機は昨年2月、ベラルーシ国内の基地でウクライナ空軍もしくはそのベラルーシ人工作員によって損傷したとみられる。

キーウ・インディペンデントは、A-50がウクライナ南部の「ザポリージャ州キリリウカ方面で任務に就いた直後」に撃墜されたとしている。A-50の撃墜はIl-22が攻撃を受けたわずか10分後だったという。

2機の撃墜が事実であれば、ロシアがウクライナで拡大して23カ月目になる戦争で、ロシア空軍にとって最悪の日になったことになる。昨年12月、ウクライナ南部でミサイルによる待ち伏せ攻撃を受け、スホーイSu-34戦闘爆撃機を3機失った日よりも大きな損害だ。

Il-22とA-50が撃墜されたとすれば、攻撃に何が使われたのかは問う価値がある。ウクライナ軍が保有する最高の防空兵器である米国製パトリオットPAC-2地対空ミサイルシステムは、最大で140km強離れた航空機を攻撃できるが、Il-22やA-50は通常ならこの射程のぎりぎり外を飛行するはずだ。

これに関して、ロシア空軍の指揮統制機が電波妨害(ジャミング)の克服に苦戦しているらしい点は注目に値する。「ウクライナ軍は(A-50が)電子攻撃によってかなり容易に弱体化できることを発見した」とジャスティン・ブロンク、ニック・レイノルズ、ジャック・ワトリングは英王立防衛安全保障研究所(RUSI)の昨年の報告書で言及していた。

2機は搭載するレーダーや無線機が電波妨害を乗り越えられるように、あえて通常以上に前線に近づいたのだろうか。そうかもしれないが、それは推測の域を出ない。現時点では、撃墜自体と同様、検証することはできない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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