経済

2024.01.16 09:30

米国、中国からの「デカップリング」は想像以上に困難だ

こうした利害の共有を通じて、表面的にはデカップリングが大きく進展しているように見える。米国勢調査局によると、2017年の米国の輸入における中国の割合は22%だったが、今年はこれまでのところわずか13%だ。だが、印象的と思えるかもしれないこれらの数字は、米経済を実際に中国から切り離すことの難しさを隠している。

問題は、米企業が調達先をベトナムやインドネシア、あるいはメキシコに移す際、最良の施設が中国企業の所有であることが多い点だ。トランプ前大統領が中国からの輸入に関税を課したとき、多くの中国企業は関税を避けるために他の国に施設を設けたようだ。

中国の国家統計局によると、例えば中国から東南アジアへの直接投資は、関税が発動される前の2013年には70億ドル(約1兆140億円)相当だったが、直近のデータでは2022年に200億ドル(約2兆8970億円)相当にまで増加した。東南アジアで中国に代わる選択肢を探している米国の企業は、最良の選択肢がこうした中国の投資と関連していることに気づいている。

中国企業の製品であるにもかかわらず、米国勢調査局のデータでは中国からの輸出ではなく、施設がある国からの輸出となっている。確かに、中国の支配や米国の経済的優位性を阻害する動きから経済を保護するのに、生産施設をどこの国の企業が所有しているかはほとんど重要ではないが、ベトナムやインドネシアなどにあるそうした施設が中国産の物を必要とする場合(その傾向にある)、それは大きな問題となる。

デカップリングに向けた米国の取り組みは、いずれこの障害を克服するだろう。購買・投資動向や意識調査のすべてで、米企業は今後も中国からの多角化を望んでいることが示されている。米企業はおそらく中国に依存し続ける供給源から離れていく。同時に他国にあるこうした施設は、たとえ中国資本の施設であっても、洗練されるにつれて中国産への依存度は自然と下がる。だが当面、米政府や経済界で多くの人々が口にする大幅なデカップリングは望むほどスムーズには進まないだろう。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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