ごく一部の圧力団体は別として、米政府は当然のことながら、経済、外交、軍事レベルで米国に対抗するという中国の野心を阻むためにデカップリングを望んでいる。中国に対する経済の脆弱性、つまり中国からの輸入品への依存を軽減し、自国内の経済力の源泉を発展させるために、バイデン大統領は選挙公約に反してトランプ前大統領が導入した中国からの輸入品への関税を維持している。
米政府はまた、中国への先端半導体の輸出を禁じ、米国から中国の技術への投資に制限を設けた。加えて、中国で生産された自動車や、中国製の部品がかなりの割合で使用されている自動車に対する電気自動車(EV)の税額控除も認めていない。こうした措置以外にも、米政府は中国が重要な製品の世界への供給を停止した場合に米経済全般が被る影響を抑えたいと考えている。実際、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)時や、その後のゼロコロナ政策のもとで中国は供給を停止した。
米企業もこうした懸念を部分的には共有しているが、デカップリングを求めているのは主に別の要因からだ。1つはコストの問題だ。1970年代に中国が初めて世界に門戸を開いてから数十年間、中国でモノを調達したり、中国に生産施設を建設したのは、生産コストが低かったからだった。だが、ここしばらくの間に中国の賃金はアジアや中南米の国々より急上昇している。中国は、ビジネス上の意思決定において重要な考慮事項である低コストの国ではなくなった。
信頼性という問題もある。以前は、中国は非常に信頼性が高く、契約や納期を守る国だと思われていた。だがパンデミック時、そしてその後長らく中国政府のゼロコロナ政策のもとで、中国の生産者は指定された量や納期を守ることができなかった。さらに、中国政府はパンデミックの間、特定の製品、特に医薬品や医療用マスクの輸出を禁止した。このような失策が当然のものであるなら、米国の企業は将来そうした問題を避けたいと考えている。さらに最近では、習近平国家主席が国家安全保障に執着することで、外国人が中国で活動することが一層難しくなっている。