AIがシリコンバレーの主要技術となるにつれ、エヌビディアは世界で最も価値のある企業のひとつとなった。30年以上の歴史を持つ同社は、以前はゲーム関連で知られていたが、AIモデルの訓練に使用されるグラフィック・プロセッシング・ユニット(GPU)の需要の高まりを受けて、1兆ドル規模の巨大企業に成長した。AI分野の軍拡競争によって、米国は中国がAI大国になることを警戒している。その結果、GPU市場のリーダーであるエヌビディアは、規制当局が中国を抑え込むための経路のひとつとなっている。
同社は、自社の将来のために政府へのロビー活動を強化している。フォーブスがリンクトインのプロフィールを調査したところ、エヌビディアはこの1年にワシントンDCで少なくとも4人の元連邦職員を雇用した。
しかし、ワシントンでより大きな存在感を示している競合のハイテク大手に比べれば、これは小さな一歩だ。OpenSecretsによると、ライバルのAMDとインテルは昨年、ロビー活動にそれぞれ270万ドル(約3.9億円)と500万ドル(約7.3億円)を費やした。また、アルファベットは1090万ドル(約16億円)、メタは1460万ドル(約21億円)を注いでいた。それに比べると、エヌビディアの昨年のロビー活動費は35万ドル(約5100万円)という微々たるものだった。
『半導体戦争-世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防(原題:Chip War)』の著者で、タフツ大学で国際史を教えるクリス・ミラー教授は、「このような問題について、彼らが本当に真剣に考えなければならなくなったのは今回が初めてだ」と語る。他のチップ大手も、政府への働きかけを強化しており、インテルは、より多くのチップ製造を米国にもたらすことを目的としたCHIPS法を中心にロビー活動を行ったようだ。そんな中、エヌビディアはロビー活動の場でより大きな声を上げる必要性を感じているのかもしれない。
「彼らが政府や規制当局への対応に、時間と労力を費やすのは自然なことだ」とミラー教授は言う。一方、ワシントン大学国際関係学部のジェームズ・リン教授は、「彼らは、日々の業務の一貫として政府に対応しようとしている」と語った。