スポーツ

2024.01.14 14:00

新たなスポーツの担い手ドローンレーサー。彼女はなぜ競技の世界に挑んだのか

白石麻衣

COLUMN|インタビューを終えて

技術革新と投資が加速する「エキサイティング」な世界

埼玉県郊外。その機体は天空に向かって一気に上昇し、広大な地上を見下ろした──。障害物を一瞬で抜き去り、左右360度に回転。最高スピードは時速150kmにも達する。正面からぶつかると大破するゲートやフラッグをできるだけ滑らかに素早く回避。敵機と衝突を避けつつ、コーナーの内側を狙う。機体が駆け抜ける瞬間「シュン」と、風が切れる音。小さなドローンが高速でコースを駆け抜けまくる。パイロットはリアルタイムのFPV映像をゴーグルで見ながら操縦する。
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ドローンレースとは、天空のF1レーシングとでも呼べるだろうか。ドローンから見える景色をリアルタイム映像で見たことがある人はどれほどいるのだろうか?今回は幸いにも日本代表レーサー、白石麻衣さんの操縦映像をリアルタイムで見る機会を得た。その感想は、単純に「エキサイティング!」。誰しもゲームやハリウッド映画の世界にあるカーチェイスにワクワクしたことがあるだろう。今回、私はそれと同じ感覚を覚えた。つまり、ドローンレースは理屈を超えて「エキサイティング!」なのだ。

メタ視点で見ると、「ドローン」は現在、実業メインで語られることが多い。例えば、輸送ビジネスや、空中撮影を軸にした観光ビジネス。通常のクルマや航空機では行き届かない場所にも小回りが利くモビリティ。こういう文脈だ。しかし、ドローンレースはそうしたビジネス観点よりも、むしろ「スポーツ」の側面が強い。そして、この領域は今、すさまじい勢いで技術革新が進んでいる。レース用ドローンには多くのパーツが使われているが、それらはわずか数週間という短い周期で新しいバージョンや改良品が生まれるらしい。それほどまでに技術が「発展中」の領域であり、「投資」が進んでいる領域だということだ。

これはまさに「F1」と「自動車業界」の発展の歴史に近い。F1がエッジィな技術を生み出し、自動車業界は実利の世界をつくった。同様にドローンレースの世界がエッジィな技術を生み出し、ビジネスの世界が実利を生み出す。その資金はまた技術開発に投資され、新しいイノベーションが生まれる。
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ドローン。私は正直、「既存業界の新しい一手」ぐらいにしか感じていなかった。だが、そこにはまったく違う一面がある。それが「エキサイティング」な部分。つまり人間の直感的な感情に訴えかける部分だ。情理の2つが重なったドローンの世界がとても楽しみだと理解した体験だった。


北野唯我◎1987年、兵庫県生まれ。作家、ワンキャリア取締役CSO。神戸大学経営学部卒業。博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。子会社の代表取締役、社外IT企業の戦略顧問などを兼務し、20年1月から現職。著書『転職の思考法』『天才を殺す凡人』『仕事の教科書』ほか。近著は『キャリアを切り開く言葉71』。

文=神吉弘邦 写真=桑嶋 維 文=北野唯我(4ページ目コラム)

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