スポーツ

2024.01.14 14:00

新たなスポーツの担い手ドローンレーサー。彼女はなぜ競技の世界に挑んだのか

白石:都立公園はすべてダメ。川べりでは大丈夫な場所もギリギリありますが、ゴーグルをしてヒュンヒュン練習するみたいなことは難しいです。室内では航空法にかからないので飛ばせるのですが、体育館を借りようとしても「ドローンです」と言った時点で断られます。もしウェルカムになってくれたら、ドローンスクールなどの業務もできるから、こちらはすごくありがたいです。

ドローンレーサーに一度なった人は、ドローンレースの世界だけでは終わりません。ドローン操縦の面ではトップ・オブ・トップですから、そこから派生した別の職業に就けます。施設や橋の点検・調査、農業でも農薬散布などでもドローンが使われているところは多いです。特に女性はドローンに縁がないように思われているけど、座ってゴーグルをして飛ばせるので、私がおばあちゃんになってもできるという魅力はあります。

ドローンカメラの撮影技能を身につければ、映像業界にも進めます。ドローンはデジタルとの親和性が高いから、撮影映像を3Dデータとして組み込むことにも長けています。Google Earthの世界をドローンで飛べるシミュレーターを日本人の10代の子がつくっているんです。

北野:
そうしたマーケットが盛り上がりつつあるし、新たなジャンルがつくられるタイミングのスポーツだから面白いでしょうね。先ほど「最終的に撮影がしたい」とおっしゃいましたが、それはどうしてですか。

白石:風景や人、いろんな映像が撮りたいからです。ドローンで見える景色を、多くの人に見せたい。見てもらって「おおー!」と驚いてもらう。完成したゲームが映像化されたときの反応を見るのが好きだったので、それと同じ気持ちです。

北野:もし「何でも撮っていい」と言われたら、撮りたいものはありますか。

白石:ライブで動いている街の景色でしょうか。遠くから渋谷スクランブル交差点に迫って、歩行者の上をサーッとかすめてセンター街に入って。その後、渋谷ヒカリエにダイブするとか。現実には規制があって難しいですけどね。

北野:渋谷スクランブル交差点のドローン映像は存在しない?

白石:早朝、誰もいない風景などを除けば、あの一帯で撮られているのは基本的にヘリによる空撮です。絶対にドローンを飛ばせない例によく挙げられますが、渋谷区長はドローンにフレンドリーだとも聞きますので、いつか実現できたらうれしいです。


白石麻衣◎1981年生まれ、熊本県出身。3DCGデザイナー/ディレクター業務の傍ら、ドローンによる撮影や映像製作、ドローンイベントの企画運営を行う。2017年にドローンと出合い、空撮からレースへ関心を広げる。ウェブコミュニティ「Wednesday Tokyo Whoopers(WTW)」では毎週水曜に都内近郊でイベントを開催。18年11月に中国・深センで催された第1回FAIドローンレース世界選手権(WDRC)で日本代表チーム初の女性パイロットに選出。23年10月、韓国・南原で開催のWDRCで日本代表は3位に。愛称「しろまい」。

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文=神吉弘邦 写真=桑嶋 維 文=北野唯我(4ページ目コラム)

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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