白石:小さいころによく遊んだのは、「NiGHTS(ナイツ)」という妖精のようなキャラクターが自由に空を飛ぶゲーム。最初にアクロバティックなドローンの動画をネットで見つけたとき、そのゲームを連想させたんです。高校生では「ジェットセットラジオ」の世界観にハマりました。架空のトーキョーの街をスケートシューズで走りながらグラフィティを描くゲームですが、かなり空を飛ぶんですよ。それがリアルの世界でできるものが出たんだ、とドローンを見てすぐに思いました。
反射神経と資金、忍耐がものをいう
北野:ドローンレーサーに必要なスキルはどんな感じですか。白石さんは3DのCGをデザインしていたから、空間認識能力なども高かったのでは。白石:私はドローンに出合った直後、妊娠と出産の期間に入ったので、ほかのレーサーより練習時間が圧倒的に取れませんでした。ゲーム業界でコントローラーには握り慣れていましたが、ある程度のレベルへすぐに行けたのは3Dのキャラクターや背景をつくってきた経験が生きたのかもしれません。障害物の合間を飛ばすときも「間の距離がこれくらいだな」という感覚をなんとなく頭で描けますから。
ただ、最も必要なのは反射神経です。だから世界の舞台ではキッズレーサーが速いんですよ。
北野:若い人最強説。
白石:あとは、資金力。嫌な話ですが、自腹じゃないだけ、かえってキッズは自由にやりやすい。いちばん薄い層が20代です。社会に出てすぐに何万円も注ぎ込むのはきついですから。それから、忍耐力。練習すれば、すぐ壊れる。練習するために時間をつくって遠くまで行っても、なかなか上達しませんし。
北野:だからエンジニアやデザイナーに向いているのかもしれない。
白石:徹夜してつくる、みたいな。
北野:レース中の駆け引きはどうですか?
白石:メンタルが強くないと本当に勝てません。トップレーサーでも、本番は指が震えています。練習量や速さで、その震えを「いなして」飛ばす世界です。
レース引退後も活躍できる仕事
北野:今、このタイミングでドローンレーサーを目指す魅力や面白さは。白石:性別に関係なく活躍できるスポーツという部分は大きいです。今から始めても世界レベルの選手になれる可能性が十分にある。韓国や米国に比べて日本の環境は大きく後れを取っていますが、それでも先日の国際大会では10代の日本人選手が個人戦で2位の成績を収めました。
北野:海外に対して日本はドローンの世界で後れを取っている?
白石:やりにくさは感じます。例えば、海外では斬新なドローンの映像がたくさん生まれていますが、日本は真逆で「何かが起こりそうなら取りあえず規制しよう」というスタンスですから。
北野:そもそも東京では飛ばせる場所がない。