ストイックで真剣なELIONEの言葉
ELIONEは1987年生まれ。静岡県沼津市の出身で10年前に上京。すでに5枚のアルバムをリリースし、多くのリスナーから支持を得ている。そのELIONEは、まるでお茶でも飲むかのような気楽な調子で、私にこう言ってきた。
「自分でスタジオをつくってから、曲をつくらなかった日はないです。来年は300曲つくるつもりです」
日本のHIPHOP界が誇る音楽プロデューサーBACHLOGICがフルプロデュースしたことでも話題になった5thアルバム「So Far So Good」。その最新アルバムをリリースし、いまや、HIPHOP界でのプロップスを着実に積み上げ、煌びやかなスポットライトを浴びているELIONEから出てくる言葉は、想像以上にストイックで、真剣だ。そして絶え間ない才能を磨く姿勢を感じる。
「いま思い返すと、ラップを始めた頃はほんと下手でしたね。だからこそ、人の何倍も音楽に時間を費やしてきました。当然ラップもするけど、ビートもつくるし、プロデュースもする。できることをすべてやって、自分と自分の周りにいる人間とともに勝負したかった」
だからなのだろうか、ELIONEのもとには多くのラッパーが集まってくる。ELIONEには、いまや飛ぶ鳥落とす勢いで活躍するラッパーCHICO CARLITOのアルバムのエグゼクティブプロデューサーという顔があり、他のアーティストへの客演やプロデュースも枚挙にいとまがない。彼がいままで培ってきたことが、着実に彼のなかで結晶化し、熟し始めているのだ。
「オレと似てるぜ ELIONE」
これは、アルバム「So Far So Good」に収録された楽曲『別にいいんじゃん? (Remix) feat. Mummy-D & AKLO』のなかで、業界のレジェンドMummy-Dが歌ったリリックだ。
では、Mummy-Dはいったい何が似ていると思ったのだろうか。
1つは、純粋にELIONEの人間的な部分だと思う。ラップだけではなく、音楽に向き合い、自らが努力して、積み上げてきたものを、周りの人に惜しみなく共有し、楽しむ。
ELIONE が、HIPHOPカルチャーが大切にする「UNITY(連帯)」という価値観を自然体で表現している数少ない男だからこそ、相通じるものを感じたのかもしれない。
そして、もう1つ大事なことは、音楽でラップで新しい挑戦をして、新しい表現を切り開こうとしているところなのだと思う。Mummy-D自身が、黎明期のHIPHOPシーンでそうしたように。