カルチャー

2024.01.15 13:30

才能に甘んじることなく同質的社会のリアルを歌うELIONEがめざすもの

ストイックで真剣なELIONEの言葉

ELIONEは1987年生まれ。静岡県沼津市の出身で10年前に上京。すでに5枚のアルバムをリリースし、多くのリスナーから支持を得ている。

そのELIONEは、まるでお茶でも飲むかのような気楽な調子で、私にこう言ってきた。

「自分でスタジオをつくってから、曲をつくらなかった日はないです。来年は300曲つくるつもりです」
 バックステージで雑談中のELIONE
バックステージで雑談中のELIONE
日本のHIPHOP界が誇る音楽プロデューサーBACHLOGICがフルプロデュースしたことでも話題になった5thアルバム「So Far So Good」。その最新アルバムをリリースし、いまや、HIPHOP界でのプロップスを着実に積み上げ、煌びやかなスポットライトを浴びているELIONEから出てくる言葉は、想像以上にストイックで、真剣だ。そして絶え間ない才能を磨く姿勢を感じる。
 


「いま思い返すと、ラップを始めた頃はほんと下手でしたね。だからこそ、人の何倍も音楽に時間を費やしてきました。当然ラップもするけど、ビートもつくるし、プロデュースもする。できることをすべてやって、自分と自分の周りにいる人間とともに勝負したかった」

ステージに上がる直前にウォーミングアップするELIONEステージに上がる直前にウォーミングアップするELIONE

だからなのだろうか、ELIONEのもとには多くのラッパーが集まってくる。ELIONEには、いまや飛ぶ鳥落とす勢いで活躍するラッパーCHICO CARLITOのアルバムのエグゼクティブプロデューサーという顔があり、他のアーティストへの客演やプロデュースも枚挙にいとまがない。彼がいままで培ってきたことが、着実に彼のなかで結晶化し、熟し始めているのだ。

「オレと似てるぜ ELIONE」

これは、アルバム「So Far So Good」に収録された楽曲『別にいいんじゃん? (Remix) feat. Mummy-D & AKLO』のなかで、業界のレジェンドMummy-Dが歌ったリリックだ。
 
ELIONE の代表的な楽曲『別にいいんじゃん? (Remix) feat. Mummy-D & AKLO』


では、Mummy-Dはいったい何が似ていると思ったのだろうか。

1つは、純粋にELIONEの人間的な部分だと思う。ラップだけではなく、音楽に向き合い、自らが努力して、積み上げてきたものを、周りの人に惜しみなく共有し、楽しむ。

ELIONE が、HIPHOPカルチャーが大切にする「UNITY(連帯)」という価値観を自然体で表現している数少ない男だからこそ、相通じるものを感じたのかもしれない。

そして、もう1つ大事なことは、音楽でラップで新しい挑戦をして、新しい表現を切り開こうとしているところなのだと思う。Mummy-D自身が、黎明期のHIPHOPシーンでそうしたように。
次ページ > 平和で同質的社会のなかで何を歌う?

文・写真=小田 駿一

ForbesBrandVoice

人気記事