兵站が鍵を握る持久戦になっているこの戦争の出来事としては、ここ数カ月で最も報道が不十分なものだ。だが、ウクライナ軍は、この村を流れるカルミウス川に架けられつつあった未完成の橋を崩落させることで、被占領下のウクライナ南部クリミア半島やその周辺への補給線を改善しようとするロシア軍の取り組みを後退させた。それをあざ笑うようなやり口でもあった。
「ウクライナはロシア軍の主要な兵站構想に穴を開け、ロシア側が半年近く本格的に取り組んできた補給計画を妨害した」。地元紙キーウ・ポストの上級国防担当記者ステファン・コルシャはそう解説している。
ロシア軍が本土からウクライナ南部の部隊に大量の補給物資を運ぶ方法は主に、(1)クリミアへの海路、(2)ケルチ橋(クリミア大橋)経由でのクリミアへの道路と鉄路、(3)ウクライナ南東部への鉄路──という3つがある。
ロシアが2022年2月にウクライナに対する戦争を拡大して以来、ウクライナ軍はこれら3つの補給線をすべて攻撃してきた。
(1)については、ウクライナ軍はミサイルや水上ドローン(無人機)で、補給物資を運搬する黒海艦隊所属の揚陸艦の大半を損傷させるか撃沈し、残りの艦艇にとってもクリミアの港を非常に危険な場所に変えた。(2)のケルチ橋も、爆弾やミサイルなどの攻撃で再三損傷させている。
(3)に関しても、陸上を走る主要な鉄道は前線方向に北へ何度か蛇行しているため、ウクライナ軍の榴弾砲の十分な射程圏内にある。ウクライナ軍の砲兵が、通過する列車や路線自体を攻撃するのは造作ないということだ。