航空工学分野での創業経験があり、グーグルでシュミットの同僚だったスランが協力者であることは理にかなっている。ドイツ出身のロボット工学専門家であるスランがグーグルに関わるようになったのは2010年。同社の共同創業者のラリー・ペイジが、自動運転車の開発でスランを採用した。スランはそのときすでにスタンフォード大学で自動運転車に取り組んでいた。
自動運転車開発の取り組みはやがてグーグルの親会社であるアルファベットの子会社Waymo(ウェイモ)となり、ラボはグーグルX、つまりグーグルの先端技術プロジェクトのための秘密の開発部門へと姿を変えた。スランは2010年にペイジの支援を受けてエアタクシーのスタートアップ、Kittyhawk(キティホーク)も設立した(2022年に事業停止)。翌2011年にはオンライン教育企業Udacity(ユダシティ)を設立し、3年後にグーグルの副社長兼フェローを退任。直近ではSage Labs(セージラボ)というAI企業の設立を発表した。
グーグルでは過去にドローン・プロジェクトが物議を醸したことがある。シュミットがまだアルファベットで技術顧問を務めていた2018年、米軍がドローンで撮影した監視画像の分析に同社のAI技術を使用するという、国防総省の「プロジェクト・メイブン」の契約に数千人のグーグル社員が抗議した。この騒動では従業員らが辞職し、グーグルはAI兵器を開発しないと表明するAIガイドラインを作成することになった。そして契約を更新しないという決定に至った。
シュミットが自身のドローン・プロジェクトをいつ発表するのか、また、ノースロップ・グラマンのような既存の軍需メーカーや数々の米国のスタートアップとどのように競うつもりなのかは不明だ。シュミットは、国防総省が最近「Replicator(レプリケーター)」というプログラムを発表し、米国製ドローンへの関心を高めていることを利用したいと考えているのかも知れない。同プログラムは、今後1年間で米国のメーカーに何千機ものドローンを製造させ、ドローン分野における中国の優位性を削ぐのが狙いだ。
ウクライナは最近、外国のドローン・プロジェクトを歓迎している。同国のデジタル変革省は2023年12月、ドイツのドローンメーカーであるQuantum Systems(クァンタム・システムズ)がウクライナに研究開発センターを開設すると発表した。同社は、ウクライナが税優遇やその他の便益を提供して外国や国内のハイテク企業を誘致する「仮想経済特区」のDiia City(ディア・シティ)に加わる予定だ。
(forbes.com 原文)