ヒドロキシクロロキンは長年、抗マラリア薬として知られていたが、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)の第1波が起きた時に「臨床上の有用性を示す証拠がないにもかかわらず」(研究チーム)、一部の医師によって患者に処方された。
今回の研究では、ランダム化比較試験を行った44のコホート研究をメタ解析した。すると、米国、フランス、ベルギー、イタリア、スペイン、トルコで、新型コロナの入院患者計1万6990人が、ヒドロキシクロロキンを服用した結果死亡したと推定された。この薬は新型コロナ患者の死亡率を11%高めていた。新型コロナ患者での有害性は心臓への重篤な副作用などに起因するという。
トランプはパンデミック初期の2020年春、ホワイトハウスの新型コロナ・タスクフォースによる記者会見を仕切り(編集注:タスクフォースのトップはマイク・ペンス副大統領が務めていた)、新型コロナの予防と治療でヒドロキシクロロキンの使用を一貫して支持した。食品医薬品局(FDA)や疾病対策センター(CDC)をはじめとする米政府の公衆衛生当局の見解とは、まったく相いれない主張だった。
当時、臨床研究者も、同タスクフォースのメンバーだったアンソニー・ファウチ国立アレルギー感染症研究所長(当時)ら政府の公衆衛生担当の高官も、ヒドロキシクロロキンは新型コロナウイルスに対する有効性は実証されておらず、効果より害が大きい恐れもあると警告していた。