ヘルスケア

2024.01.09 09:30

トランプ推奨の抗マラリア薬、服用でコロナ患者1万7000人死亡

安井克至
トランプが米国民に医学的根拠のない助言をした例はこれにとどまらない。2020年4月、新型コロナ対策には漂白剤などの消毒剤が役に立つのではないかとの考えを示唆したのは悪名高い。米中毒対策センターによれば、米国内では同年春、漂白剤など家庭用洗剤の摂取による中毒事故が前年の2倍に急増した。

トランプ政権の新型コロナ対策には、官民の連携でワクチンや治療薬、診断法の開発、製造、配布を促進する「ワープスピード作戦」をはじめ、評価できるものもあるのは確かだ。この作戦は、ワクチンや治療法の開発や実用化のスピードという点で非常に大きな成功を収めた。

しかし、トランプが医学的に根拠のない主張を繰り返したのは大いに問題だ。疾病対策に関する政府の勧告や助言は厳しく管理されるべきだし、必要な専門知識がある者だけが行うようにすべきだ。

医療専門家による発信の仕方など、米国の公衆衛生当局にも改善すべき点がないわけでなない。それでも、政府から国民にメッセージを発するのはやはり、確かな専門知識をもつ当局者であるべきだ。公衆衛生当局者も間違いを犯すことはあるかもしれないが、医師の資格、あるいは臨床科学のバッググラウンドをもっている。

トランプはそうではない。トランプは、証明されていない治療法や危険な物質を米国民に喧伝すべきではなかった。

この話の教訓は、医学的な専門知識のない大統領が公衆衛生当局の見解に従わない場合、厄介な事態が予想されるということだ。トランプのように、厳格な訓練を受けた医療専門家たちに実際の判断や指導を一任するのではなく、自分が誰よりも目立とうとする大統領の場合は、それとくに懸念される。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

新型コロナウイルス特集

ForbesBrandVoice

人気記事