1日の不定期なタイミングで通知が届いてから「2分」という制限時間内であれば、フィルター加工ナシのリアル画像を投稿できる。制限時間に間に合えば、同じ日にもう2回、今度は好きな時刻に画像共有ができる(2回目、3回目は準備はできるが、初回同様に画像加工はできない)。
「コラージュ機能」「2分間」「盛れない」
特徴的なのは「コラージュ機能」。アプリを使用中に携帯でシャッターを押すと、セルフィー用インカメラと通常の外向けカメラで同時に撮影され、自動でコラージュされるのだ。つまり、いずれかの写真がもう一方の写真の左上に小さく表示される(どちらがどちらに含まれるかは、タップで切り替えることができる)。ちなみに、自分が投稿しなければほかの人の投稿を見ることができないことも、「通知を逃したくない」動機につながる。また、通知は全員、同じタイミングで不定期に届くから、友人たちと「同じ2分間」に何をしているかを共有しあうことになるのだ。
通知は不定期なので準備ができないし、写す写真は編集加工できず「盛れない」ため、「アンチインスタグラム」とも称されるのがこのアプリだ。ユーザーたちは互いに実にリアルな日常のコマを共有し合うことをある意味「強いられる」わけだ。
そのためか、BeReal側からは、「つながり合う(画像共有OKできる)のは本当に親しい友人だけにしよう」という勧奨メッセージが届く。ふだん「盛った」画像ばかり見せ合っている、それほど気を許し合わない友だちには見せたくない素顔や、イケてない背景も見えてしまうからだ。
昼休み中に通知!?
BeRealに関して昨年、一般の高校生がTikTokにアップした動画が話題になった。BeRealの通知を模した通知音を昼休み中にわざと鳴らしたところ、教室内の同級生たちが一斉に携帯電話を取り出し、チェックし始める様子を撮影したリアル動画だ。Z世代たちがどれほどこのSNSアプリの通知を「逃すまい」と躍起になっているかが一目瞭然の投稿で、ユーザーたちの間で「あるある」「だよねー」の共感を呼んだのである。
ディズニーランドのシンデレラ城前で友だちと、あらかじめ打ち合わせたお揃いのディズニー服で自撮り写真撮影! 盛り盛りに加工してSNSにアップ! がZ世代の(むろん例外はあり)デフォルト文化とすればそのまさに逆張りといえるのだが、さてこのBeReal、なぜここまでZ世代の心をつかんだのか?
まず、通知が届くのは、トイレの中だったり駅のホームだったり、家族との食事中だったりすることもあるだろう。そんな環境でも「とりあえず」「なんらか」の投稿をしなければならない。その「2分間」のゲーム感覚と、通知に応じられた達成感は特別、という(ある中学生ユーザーの声)。
また、うまく投稿できた日は、BeReal上のカレンダーに、投稿画像のアイコンが表示される。毎日投稿できれば、カレンダーがぎっしり埋まる、という仕掛けだ。この仕様も達成感を後押しするわけである(ちなみにこのカレンダーは自分以外には見えない)。
また、投稿のスクショを撮影したユーザーの足跡が残る仕様もある。後にいわゆる「魚拓」を拡散したのが誰か、わかってしまうわけだ。その倫理的安全性も、SNSがきっかけの多くの事件、自死のニュースにさらされるZ世代たちから支持を獲得し得ている一因かもしれない。
インスタグラムのエフェクトにも「BeReal」登場
おもしろいのは「RealMojis」という機能だ。これを使えば、従来のSNSのイラストのスタンプだけでなく、「スタンプと同じ表情をした自分」の写真を使って、友だちが上げた投稿にリアクションすることができる。たとえば「グッド!」の表情をした自分の顔の右下に「グッド」のリアクションスタンプが押されるわけだ。Facebookなどで知人の投稿に対し、しかめっ面をしながら(適当に)「いいね!」のスタンプを押した経験は誰でもあると思うが、「RealMojis」なら、本当に「いいね」と思っている様子が相手に伝わる。リアルで誠実なコミュニケーションが取れる仕様なのである。
最近ではインスタグラムの「エフェクト」、ユーザーが自分で追加する機能にも「BeReal」があらわれた。BeRealのセルフィー、プラス外カメラのコラージュ機能を模し、しかもそのモードで撮影した写真は編集加工ができない。
「有名になりたい人はインスタを使って」
このようにBeRealは、「不特定多数の注目を集める」のではなく、素顔の自分と盛らない日常を本当に気のゆるせる友だちたちと共有するためのアプリ、というわけだ。App Store上には「BeRealでは有名になれません。もしもインフルエンサーになりたければ、TikTokやインスタグラムで」といった意味の注意書きもある。開発者のアレクシ・バレイヤとケビン・ペローはフランスの「MCE」の取材に対して次のように語っている。
「われわれは人々に、自分自身でいることや自分自身の人生を心地よく感じてほしい。人と比較したり、インフルエンスの蓄積を目的に自分の人生を発信するような、中毒性のあるソーシャル・ネットワークの代替メディアを作りたかったのです」