ビジネス

2024.01.09 12:45

新浪剛史の体当たり組織論──辛い仕事ほど上がやらねばならない 

しかし、時間が経ち、怒りに震える気持ちが少しずつおさまっていくと、話が素直に聞けるようになった。もしかすると、言われていることは、正しいのかもしれないと。
 
「伝わっていると思っていたことが、まったく伝わっていなかったということです。コミュニケーションが一方的だった。だから、組織は動かなかった」
 
新浪さんは、そこから意識を大きく転換するのです。どういうモノの言い方なら理解してもらえるのか、必死の模索が始まりました。社員に自ら聞きにも行きました。そして少しずつ、思いが伝わる感触を得ていきます。
 
「大切なのは共鳴することなんです。僕の言うことが、相手の抱えている問題と合致したときにこそ、共鳴は起こる。共鳴すると、腹に落ちる。そこから小さくても成果が上がると信頼関係が生まれる。そうやって初めてアイツが言うならやってみようということになる。必要なのは、まずは相手を知ることなんです。そして心の琴線に触れるような伝え方ができるか。相手を本気にさせられるか。そのためには、直接対話じゃなきゃいけないんです」
 
新浪さんは自ら積極的に社員のところに出ていきました。社員にだけではありませんでした。加盟店の前にも出ていきました。難題が山積し、「加盟店が集まるセミナーへの出席は控えたほうがいい」というアドバイスもあったなかだったといいます。
 
それまで、加盟店のセミナーには、社長はビデオ挨拶で済ませていました。ヘタに出ていくと、追求される。ところが、新浪さんはその慣習を受け入れませんでした。
 
「逃げちゃダメだと思ったんですよ。自ら出なきゃいけないと」
 
どんな新社長が来たのか、セミナーは「首実検」の場でもあることもわかっていました。どうせ改革なんてできっこない……。そんな空気も感じていたといいます。なので、セミナーではあえて驚くべき話題から入っていきました。謝罪から始めたのです。
 
「考えてみたら、当たり前のことなんですけどね。やっぱりうまくいっていなかった。だったら、反省から始めないといけない。率直に、悪いところは悪かったと言いました。でも、これから生まれ変わりますと」
 
加盟店のオーナーたちが、新浪さんの話に身を乗り出してくるのがわかりました。会場に今度は違うぞという空気が広がっていったのです。
 
「それまでは誰も本気でぶつかっていなかった。対決もしなかった。それじゃダメなんです。思い切ってぶつかったら、ちゃんと反応があったんです」
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文=上阪徹

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