米国で加速するサブスク動画離れ、エンタメの新潮流とは

2024年、エンタメ・スポーツ産業で注目すべきは、成長が鈍化し淘汰が始まっているサブクリプション型の動画配信サービス(SVOD)の行方である。米国ではここ数年でケーブルや衛星放送を解約してSVODに乗り換える「コードカット」現象が急速に進み、SVOD事業は世界市場で経済規模が16年から22年末にかけて4倍に成長。総契約者数は2千8百万人から1億2千万まで増加した(ボストン・コンサルティング社調べ)。ところが6年続けて対前年比55%増で成長を続けてきたものの、23年にはその比が1桁代に留まった。Netflix、Amazon Prime、Appleなどの大手も経営方針の仕切り直しを迫られている。

SVOD産業の経営を分析するために必要なデータは、新顧客を一人獲得するためにいくら経費を費やしたかの指標であるCPA(コスト・パー・アクイジション:顧客獲得単価)とCAC(カスタマー・アクイジション・コスト)、そして顧客が契約期間中にどれだけの利益貢献をするかを示すLTV(ライフ・タイム・バリュー:顧客生涯価値)で、ここに広告掲載型の動画配信サービス(AVOD)の場合は、広告売上に伴う販管費が付加される。

こうした数値は2023年に全て悪化、SVODは明らかに過当競争状態にあり、契約者を共食いする状況から抜け出せず、このままでは経営破綻が危惧されるサービスもでてきている。

SVODでは経営を維持できない場合は、広告枠を設けてAVODに切り替えるか、もしくはNetflixのように広告付きプランを設けるなどして対策を講じている。

配信サービスの成長に歯止めがかかったワケ

では、なぜSVOD産業の成長に急ブレーキがかかったのだろうか?まず、コロナ禍の終息が挙げられる。2年以上にわたり、多くの消費者が通勤から解放され、在宅時間が増えたものの、映画館やライブ会場へのアクセスはままならず、SVODには特需が生じていた。しかし、従来通りの生活が戻り、スポーツ観戦やコンサート、フェス参戦などエンタメの選択肢も増えたことから、在宅視聴時間が減少。複数のSVODに加入していた契約者が視聴頻度の低いサービスを大量に解約したことが大きい。

さらに、競争の激化により、各社は独自の企画によるオリジナル作品の製作にこぞって参入。2022年にSVOD大手3社が投じたオリジナル作品の製作費は、前年比で45%も増加した(プライス・ウオーターハウス社調べ)。

つまり、契約者数が減少しているにもかかわらず、編成費が高騰したために、利益率が一様に低下したことになる。
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