また、2024年から米連邦法により、映像制作会社が俳優と個人契約を行う際に、また、所属人材を特定の映画や番組に出演者として貸し出す「ローン・アウト」と称される契約を所属事務所と締結する際に、これまで開示する必要のなかった製作費がどこから調達されているかを開示することが求められるようになった。
これは、中国や中南米、中東からの出資で構成された合同会社(LLC)が往々にして制作を途中で投げ出して出資義務を果たさずに消滅、製作費が資金洗浄に利用された事件が起きたことがきっかけとなっている。さらに著名資産家が原資を明らかにせず、ハイリスク投資と割り切って投機する不透明なバニティ・インベストメント(見栄の為の投資)を抑止するためでもある。
こうした理由で製作費の調達が規制されてしまうことも、オリジナル作品の製作資金の枯渇化につながってしまう。
リスクあるスポーツ放映への参入
また、Amazon Primeによるスポーツ放映への参入も、追随したSVOD各社の編成費を急増させた。Amazonは長きにわたり地上波やケーブル、衛星放送が放映して来たNBAの放映権を新たに獲得し、平日の夜間にPrime独占で注目度の高い試合の放映権を来期から獲得する交渉を行っている。しかし、その原資は契約料の値上げで補う以外に考えられず、スポーツの取り込みは必ずしも成功するとは考えられない。スポーツ中継に欠かせないのは人気の高い出演者の起用だが、ここ数年で地上波、ケーブル、衛星放送で彼らの争奪戦が激烈化し、今では元プロ選手がアナウンサーや解説者として年俸2千万ドル規模の報酬を手にすることも珍しくなかった。
契約者が大幅に増加しなければ、莫大な放映権料と巨額の出演者ギャラにより大誤算となる可能性が極めて高い。Apple TVは米サッカーリーグのMLSと巨額の囲い込み放送契約を締結、AmazonもNBAに加えてNFLにまで大金を投じているが、Netflixはスポーツ選手に纏わるオリジナル・ドキュメンタリー作品の製作を増やすことで、対抗している。
このように2024年、SVOD事業が大きな局面を迎えており、立ちはだかる荒波を乗り越えられない事業者は、大手に吸収合併され、廃業に追い込まれる未来もある。