国内

2024.01.17 16:30

越境するリーガルテックの旗手。競合ひしめく巨大市場で真っ向勝負

角田 望|LegalOn Technologies

角田 望|LegalOn Technologies

Forbes JAPAN2024年1月号の特集「日本の起業家ランキング2024」で6位に輝いたのは、LegalOn Technologiesの角田望。
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リーガルテックの旗手は、国内事業を盤石にすると同時にグローバル展開も本格化。角田は成長を加速させるためのかじを取る。

AIを活用した契約書のレビューサービス「LegalForce」と契約書管理システム「LegalForceキャビネ」を二本柱に、国内約4000社のユーザーを抱えるLegalOn Technologies。累計の資金調達額は179億円に上るリーガルテックの旗手だ。「経営者の仕事とは何か。僕のなかで答えはひとつで、ビジネスを伸ばし続けること以外にない。そのために必要なことを必要なタイミングでやってきました」。森・濱田松本法律事務所で弁護士としてのキャリアを積んだ後に創業した代表取締役執行役員CEOの角田望には、そんな自負がある。

2022年はシリーズDでソフトバンク・ビジョン・ファンドなどから137億円を調達したほか、米サンフランシスコに子会社を設立。米国進出の足がかりを築いた。グローバル展開を見据えて社名を従来のLegalForceから変更し、「法とテクノロジーの力で、安心して前進できる社会を創る」というパーパスも策定。さらに、業界を挙げてリーガルテック市場のルールメイキングを進めるべく、業界団体「一般社団法人 AI・契約レビューテクノロジー協会」の発起人のひとりとなり、専務理事に就任した。

角田は「僕自身の時間をビジネスの地盤固めともいえるコーポレート系の仕事にかなり使った1年でした」と振り返る。こうした取り組みは23年になって具体的な成果に結実している。4月にLegalForceの米国版ともいえるサービスをリリースし、現地企業を中心に導入が進んでいる。また、8月には法務省が公表したガイドラインにより、同社サービスの適法性があらためて明確になったという。
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翻って23年は、角田個人のリソースを「プロダクト開発やビジネス開発に全振りしている」状況だ。生成AI、特に大規模言語モデル(LLM)への重点的な投資やサービスへの実装を進めているほか、小規模事業者に特化したAI契約レビューサービスや、企業の意思決定についてプロセスの可視化や実行を支援する新プロダクトもリリースした。

グローバルでの成長を本格化させるのも重点テーマだ。リーガルテック分野では1000社以上のスタートアップがしのぎを削るといわれる米国だが、「勝ち切っているプレイヤーはいない」と見る。真っ向勝負で負ける気はしない。

「巨大な需要はありますが、リーガルテック市場はまだ黎明期。累計の資金調達額を見ても、当社はグローバルでトップ10に入る規模です。言語や商慣習の違いは大きいので、新たに米国でスタートアップを立ち上げた感覚でプロダクトもつくっていますが、契約というフレームワーク自体には共通することが多いですし、契約書を自然言語処理技術を使って扱っていくという当社のコアな強みは十分に生かせます。米国向けプロダクトを基盤に、ほかの英語圏でのビジネス展開を一気に進めることもできると思っています」。

かなり振り幅の大きい、性質の異なる経営者としての仕事を短期間でこなし結果を出してきた。コーポレート系の仕事と、ビジネスやプロダクト開発にかかわる仕事。「僕はどっちもいける」と話す穏やかな笑顔の奥には、確かな自信がうかがえる。「弁護士なのでコーポレート系の仕事は得意ですし、好きですよ」としつつ、経営者は自社の価値づくりに主体的に取り組むべきという確固たる信念のもと、角田は成長を加速させるためのかじを取る。


角田 望◎2010年京都大学法学部卒。同年、旧司法試験に合格。12年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。13年、森・濱田松本法律事務所入所。17年に法律事務所ZeLoとLegalForce(現 LegalOn Technologies)を創業。

文=本多和幸 写真=小田駿一

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