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2024.01.08 14:00

伝説的起業家、ピーター・ティール。その哲学思想と描く「理想の社会」とは

ティールは直近のインタビューで「自分は逆張りだと思われがちだが、むしろ異なる要素がどのように統合されるのかという大局(ビッグ・ピクチャー)にこそ興味をもっている」と語った。左派に圧力をかけ、右派を啓蒙しながらティールが遠くに望むのは、実は(意外に思われる人もいるだろうが)非暴力の「神の国」の実現である。このように独自のコスモロジーを語り、自らを磁場に価値観や文化圏そのものを再編成していくティールを、ルネサンス期の僭主ロレンツォ・デ・メディチに例えるコラムニストもいる。

イノベーションを最良の策と信じ、民主主義を脅かしかねない彼の個々の行動には賛同しない人も多いだろうし、それが何をもたらすのかは未知数である。しかし、SNSや生成AIにより自分と他人の考えの区別がますます曖昧になるなか、「模倣しない」ティールの哲学と実践が私たちに教えることは多く、その問題提起としての意義は極めて大きい。


ピーター・ティール◎起業家、投資家。PayPal、OpenAI、Palantir 共同創業者であり、Meta(Facebook)へ最初期に投資した実績をもつベンチャー投資家。ドナルド・トランプ元政策顧問。2023年4月にはトランプに不満があると共和党支持を撤回した。

柳澤田実◎関西学院大学神学部准教授。1973年、ニューヨーク生まれ。専門は哲学・キリスト教思想。博士(学術)。編著書に『ディスポジション─哲学、倫理、生態心理学からアート、建築まで、領域横断的に世界を捉える方法の創出に向けて』(現代企画室、2008年)。

文=柳澤田実

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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