鉄鋼業は、グローバルで約350兆円もの巨大市場を持つ産業。一方で、最もCO2を排出している産業でもある。こうした背景から近年は、CO2の排出量を抑えながら鉄をリサイクルする技術への関心が高まっているのだ。
EVERSTEELでは、鉄のリサイクルに必要な鉄スクラップに含まれる不純物を、AIの画像認識で瞬時に検出できる「鉄ナビ検収AI」を開発。7社の大手鉄鋼メーカーで実証実験を行い、すでに実務への導入を始めている企業もある。
田島はなぜ「鉄」に人生をかけるのか。その原点は、地元の大分にあった。
実家は鎌倉時代から続く林業
大分にある田島の実家は、鎌倉時代から代々林業を営んできた。田島も幼少期から、夏は下草刈り、冬は木の枝の剪定と、森を守る手伝いをしてきた。しかし、斜陽産業である林業は儲からないため、実家周辺では伐採したまま植林をやめてしまうハゲ山が目立つようになった。「森を守ることが当たり前」という環境で育ってきた田島は、ハゲ山を目の当たりにして、環境への問題意識を強く持つようになった。
「環境に良いことを追求して、かつビジネスとしても成立させるのは難しいのかもしれない。でも、それが両立した会社をつくりたいと思いました。幼少期から父親に“起業しろ”と言われていたので、もともと起業には興味があったんです」
とはいえ東京大学に進学した段階では、まだ具体的に何をするべきかがわからなかった。ひとまず材料のリサイクルや環境に良い使い方を学ぼうと、材料工学が学べるマテリアル工学科に進学した。
「鉄はほぼすべての製品に使われているから、鉄のリサイクルが進めば、ほぼすべての製品のリサイクルが促進できる」
ターニングポイントとなったのは、大学の研究室の先生のこの言葉だった。まさにその通りだなと思い、鉄は人生を賭けてもいい材料だと感じた。