Journal of Personality and Social Psychology誌に掲載された最新の研究は、自然の中で過ごすことが、本来の人生を歩む個人の能力を高める効果について調べた。人生における本来性とは、自分に忠実になり、自己認識を高め、自らの行動を、外部からの期待ではなく、内的な価値や信念と一致させる感覚のことだ。本来性には強みと弱みの両方を認め、自分にも他人にも正直でいることも含まれ、より深い関係や、より高いレベルの幸福を育むことにつながっている。
この研究によると、自然には人が真に自分らしく生きるために役立つ4つの効能があるという。
1. 自然は自尊心を高める
自尊心とは、個人の社会的価値、能力、および人間としての価値に対する主観的評価を指す。研究者らは、自尊心が森林浴のような行為と自分らしさの体験とをつなぐ最も強い要素であることを明らかにした。自然環境の中で過ごすことで自尊心を高めることができるのは、自然が完全に中立的な存在だからだ。都市環境では、効率や生産性への期待が常に高く、個人が内なる自分と切り離されることによって自尊心を傷つけられることがあるのに対し、自然の中では、評価されることも社会的に期待される役割を担う心配もなく、ただ存在して自分自身でいることができる。この体験が過剰な自意識を軽減し、自分のプラス面への集中を促す。
自然には癒やしの特性もある。たとえば、2021年の研究は、自然の画像を見るだけでも、社会的疎外に直面した人の自尊心を高めることを発見した。自尊心、すなわち自身に対する肯定的な評価を持つことによって、自己受容と承認を体験し、より高いレベルの本来感を育むことが可能になる。
加えて、研究者らによると、人はしばしば最も本来的な自分を善良で道徳的であると考え、肯定的で社会的に望ましい特徴や行動と結びつけるという。また、別の研究によると、自分自身に関する好意的な反応を受けたり、きわめて肯定的な未来を思い描くことで、自尊心や本来感を高めることができるという。
自然と触れることによって自尊心と本来感が高まる体験は、心理的な幸福感を高め、落ち込みや不安、ストレスなどを軽減することが、研究者たちによってわかった。
2. 自然は自律心を育てる
自然の中で過ごすことが自律要求を満たすことを研究者らは発見し、自身の行為と振る舞いを制御するための基本的な心理的要求に言及した。そこには、選択をする際に、圧力を感じたり外的要因に制御されたりすることなく、自分自身の関心や価値、信念に基づいて判断したいという欲求も含まれる。都市環境では、複雑な刺激、社会的行動様式、テクノロジーによる注意力阻害の中を渡っていく必要があり、認知資源(注意、判断のためのエネルギー)が枯渇し、自律心を失いやすい。研究によれば、自然環境に身を置くことによって、絶え間ない警戒心やさまざまな雑音の負荷から解放され、心的資源を補充することができ、外部からの注意要求による束縛が軽減され、より大きな自由と主体性を経験できる。
さらに、自律性は「促進焦点」と呼ばれる、自身の目標達成と成長を積極的に追求する心のあり方とも密接に関係している。またこれは高いレベルの本来感とも関連しており、それは目的に向かって行動することが、人の最も深い価値感や願望と合致する傾向にあるためだ。