化石化したサメの歯は化石記録に多く見られるが、これまでは海洋堆積物の中に埋もれたり、暴風雨でより古い堆積物が再移動した後に海岸に漂着したりした状態で発見されていた。生息地の海底で化石化したサメの歯を見つけるのは、特定の環境条件が満たされなければ不可能だ。
この歯が当初の位置に保存された理由については、海流によって堆積物は蓄積できないが、化石を動かしたり壊したりするほど強い流れではない海域の海底の一部に位置しているからだと、研究チームは示唆している。化石標本が採取された場所は水深3090mで、無名の海山の尾根頂上部にある比較的平坦な領域だった。化石は、酸化マンガンの塊(ノジュール)が一帯に広がる範囲の海底から突き出ている状態で発見された。このようなマンガンノジュールは、堆積物の流入が少なく、化学的な沈殿が卓越している領域の海底で形成される。
研究チームは、遠隔操作水中無人探査機によって化石を記録した後に回収し、メガロドンの歯と同定した。
メガロドンは、約2300万~360万年前に世界の海を泳ぎ回っていた。
ポップカルチャーで人気を博しているにもかかわらず、メガロドン種については意外にも、まだほとんど解明されていない。科学者らは長年、断片的な骨や歯化石に基づき、生きた個体の姿や大きさについて議論している。超大型のホホジロザメとして描かれることが多いが、2020年に発表された解剖学的研究では、現生種のアオザメ(学名:Isurus oxyrinchus)により近い種だったと結論づけられた。生きた個体の体長は、サメが達することのできる最大サイズの約20mと最近では考えられている。
太平洋で今回発見された化石は、歯の平均的な大きさに基づいて判断すると、小型~中型の個体のものだった可能性が高い。メガロドンは成長すると歯の長さが15cmを軽く超えるが、回収された標本は6.8cmと比較的小さい。
今回の研究をまとめた論文「First in situ documentation of a fossil tooth of the megatooth shark Otodus (Megaselachus) megalodon from the deep sea in the Pacific Ocean」は、純古生物学の国際誌Historical Biologyに掲載された。
(forbes.com 原文)