ロシアが仕掛けたウクライナとの1年11カ月に及ぶ戦争では、まるでブラックジョークのような皮肉な結末を迎えた衝突が数多く起きてきた。その最新の事例となる今回の出来事は、話の始まりからオチまでが最速のものの一つとなった。
ロシアのメディアは2日朝、ロシア軍の最新対砲兵レーダー「ヤストレブ-AV」がウクライナに配備されたと報じた。だが数時間後、このレーダーはウクライナ軍の砲兵が同国南部で行った攻撃により爆破された。
皮肉はさらに続く。ヤストレブ-AVは、ウクライナ軍が運用する米製の高機動ロケット砲システム(HIMARS)からロシア軍の部隊を守るのに役立つはずだった。だが、初投入されたそのヤストレブAVレーダーを破壊するためにウクライナ軍が使ったとみられる兵器はというと……そう、HIMARSだ。ただし、りゅう弾砲から発射された誘導弾による攻撃だった可能性もある。
ヤストレブ-AVの損失は単なる笑い話ではなく、重要な意味を持つ。ウクライナでは、戦いが消耗戦となるにつれ、対砲兵レーダーを狙う大砲の重要性が日ごとに高まっている。
fucking clowns 🤡
— PS01 (@PStyle0ne1) January 2, 2024
their radar was destroyed today in Kherson in case you missed it👇 https://t.co/Kz44xMrcGH pic.twitter.com/6A2c9xWjnd
ウクライナ軍がこの希少なヤストレブ-AVを爆破する数時間前、ロシアは「ミサイル兵と砲兵による戦闘任務の効果的な遂行は、砲撃の効率と戦場での生存性を高める無人航空機の使用とともに、近代的な砲兵偵察装置の使用によっても確保されている」とうそぶいていた。
だが、対砲兵レーダーは極めて高い威力を持つことから、真っ先に標的ともなる。ヤストレブ-AVの配備から1日以内に、ウクライナ軍のドローンがその位置を特定し、HIMARSが射程約92kmのGPS誘導ロケット弾M30/31で攻撃したとみられる。
トラックに搭載された位相配列のレーダーが特徴的な信号を発していたため、ウクライナ軍はヤストレブ-AVの居場所を知っていたというのはあり得る。この信号についてはウクライナの情報機関がマークしていた可能性がある。
元米国防契約管理局(DCMA)品質監査官で、電子戦に詳しいトレント・テレンコは「電子戦の基本として、独特、あるいは低密度で価値の高い電波を発するものは、優先的に標的となる」とX(旧ツイッター)で指摘した。
(forbes.com 原文)