外骨格型装置は、推進者が望んでいるほど普及していない。だが、マサチューセッツ州ケンブリッジを拠点とするスタートアップのVerve Motion(ヴァーヴ・モーション)は、同社が開発した「SafeLift(セーフリフト)」という外骨格スーツの軽量でソフトな設計により、倉庫作業員が1日に合計2万kgもの商品を持ち上げる際に背中のけがを防ぐのに役立つと考えている。米労働統計局のデータを米保険会社リバティ・ミューチュアルが分析したところによると、過負荷による負傷は業界の大きな問題で、米国では年間128億ドル(約18兆円)のコストが発生している。
「以前から問題視されていたことです。(中略)映画『アイアンマン』を観て、これを現実にしたいと思いました」と共同創業者で最高経営責任者(CEO)のイグナシオ・ガリアナはフォーブスに語った。「映画に出てくるパワードスーツを、実用化したかったのです」。
ヴァーヴ・モーションは、4年前にハーバード大学のヴィース研究所からスピンアウトして以来、ほとんど知られることなく開発を進めてきた。同社は販売拡大のためにサファル・パートナーズの主導で2000万ドル(約28億円)を調達したと、フォーブスの独占取材に明らかにした。これにより資金調達総額は4000万ドル(約56億円)に達し、評価額はフォーブスの推定で1億ドル(約141億円)超となった。
さらに重要なのは、ヴァーヴ社が外骨格スーツで成長を続けていることだ。同社の外骨格スーツは、作業員1人あたり月350ドル(約5万円)以上かかるが、現在、クローガーやアルバートソンズ、ウェグマンズ、そしてハナフォード、ジャイアント、ストップ・アンド・ショップといった食料品店の親会社で時価総額260億ドル(約3兆6700億円)のアホールド・デルハイズなど、顧客20社の倉庫で1000ユニット以上が使用されている。売上にして500万ドル(約7億円)に迫る規模だ(ガリアナは金額についてコメントを控えた)。
倉庫作業員は背中にけがを負うことが多く、これは雇用主にとって高いコストとなる。全米安全評議会によると、作業員の欠勤に加えて、1件4万ドル(約560万円)近くにのぼる保険金の支払いが発生する。ガリアナによると、外骨格スーツの使用により背中のけがが65〜85%減るため、顧客は通常、導入初年度の前半で投資を回収できるという。また、労働者はシフト終了時に疲労が少なく、顧客の多くは生産性の向上を実感しているという。「これは元が取れる安全ツールなのです」とガリアナは語った。