パワーステアリング
ヴァーヴ・モーションの外骨格スーツは、センサーを活用して作業員の動きを測定し、その人の筋肉の動きに合わせて力を加える。このハイテクなバックパックを使うことで、作業員は持ち上げる重量の40%を軽減することができる。例えば、扱う重量が1日に2万kgだったら1万2000kgになる。ガリアナは「この数千kgの差が、けがをする原因になるのです」と指摘。このコンセプトは、自動車のパワーステアリングを使うことでハンドル操作が非常に楽になるようなものだと説明した。2019年にニューヨーク州ショーダック・ランディングにあるアホールドの施設で初の試験運用が行われた際、試着した作業員は「目が飛び出るほど」驚いていたとガリアナは振り返る。この反応が、ガリアナとウォルシュ、そしてチームの他の研究者たちに、2020年3月にハーバード大学から会社をスピンアウトさせるきっかけとなった。なお、脳卒中患者向け装具の関連技術はReWalk Robotics(リウォーク・ロボティクス)にライセンス供与され、同社は米食品医薬品局から販売許可を得ている。
新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの初期と聞くと、会社を立ち上げるには大変な時期だったと思うかもしれない。だが、倉庫作業員、特に食料品やその他の必需品を扱う倉庫の作業員は残業していた時期でもあった。「食料品流通を最初の市場として選びましたが、当時は大変な状況でした」とガリアナは言う。パンデミックの初期に、店の棚に品物を並べ続けるために倉庫作業員は何時間も残業していた。「業界の転換点のようなものでした」。ヴァーヴ・モーションは2020年3月に初の資金調達を行い、500万ドル(約7億円)を調達した。
従来の外骨格装置は重い金属製だ。ガリアナとウォルシュは、外骨格スーツを設計するために、アパレルデザイナーやロボット工学者、エンジニアから成るチームを結成した。共同創業者の1人であるナタリー・デゲンハルトは以前、靴メーカーのニューバランスでテクニカルデザイナーとして働いていた。ヴァーヴ社のオフィスでは、工業用ミシンがソフトウェア開発チームがいるところに置かれている。「私たちは、人間がどのように働くかを理解しよう、と言っていました」とガリアナは語った。チームは活動中の筋肉の動きを測定し、リアルタイムで人の動きに応じて力を調節しながら、人間の筋肉と連動するように機器を設計した。
ヴァーヴ社は、新規と既存の両方の顧客を対象に、米国での事業拡大を計画している。現在の製品は背中のけがに焦点を当てているが、いずれは肩のけがや膝の故障を予防する装置も開発する可能性がある。また、他のロボット企業と同様、同社が収集している労働者の安全に関するデータは、今後ますます重要になってくるだろう。
「3〜6カ月で投資効果が得られるような、解決が難しい大きな問題に注力しています」とウォルシュは言う。「コストを下げ、システムを使いやすくする道はあると思います。最終的には、一般消費者も利用できるようになるかもしれません」と今後を見据えている。
(forbes.com 原文)