西側諸国の1バレルあたり60ドルという価格上限も、インドと中国のバイヤーの購入価格が60ドルを大幅に上回っていることからして、体を成していないようだ。現在、ブレント原油(イギリスの北海領域で産出される原油)の価格が80ドル弱(2023年12月28日のロンドン取引終了時)であるのに対し、ロシアのウラル原油の最近の平均価格は、ブレント原油より1バレルあたり4~6ドル安い。
実際、インドの貿易業界の情報筋によると、ディスカウント幅は年初の1バレルあたり19ドルという水準から、供給逼迫時に3ドルほどに縮小したことさえあったという。
価格上限のもとで、西側諸国のタンカー運航会社や保険会社は、60ドル以上で取引されるロシア産原油を運ぶ船舶にサービスを提供することを禁じられている。だが、ロシアは主要7カ国(G7)や欧州連合(EU)の企業の保険に加入していない、「影のタンカー船団」を巧みに利用している。
ロシア産原油に対する中国やインドの購買意欲が、短期〜中期的になくなる可能性は低い。インド石油・天然ガス省の当局者らが最近、そうした傾向の一端を示した。
同国議会での証言で、当局者らは同国の需要の40%がロシアからの輸入で賄われることもあると指摘。現地紙インディアン・エクスプレスの報道によると、インドの輸入日量約500万バレルのうち195万バレルがロシア産だ。
インドは、自国のロシア産原油購入により、欧州が意図的に避けている原油を「吸収」することで市場の安定が図られ、またインドの消費者も割安の恩恵を受けると主張している。「外交的には、我々は主権国家であり、インドにとっても世界にとっても良いことをしてきたと言える」とある当局者は語った。
つまり、世界の石油市場の動きが実質的に変化しない限り、2024年のロシアの財源は前年とほぼ同じである可能性が高い。
(forbes.com 原文)