宇宙

2023.12.31 16:00

月面での人間の活動がその環境を汚染、月を覆う塵の雲が生じる怖れ

アポロ15号の有人月面着陸ミッションで使用された月面車(NASA)

月の環境形成に人類が主要な影響力をおよぼしているとする研究論文を、米カンザス大学の人類学者と地質学者のチームが発表した。汚染が広がる前に月の新たな地質年代を認定するべきだと、研究チームは考えている。

1960年代末から1970年代初めにかけて実施された米航空宇宙局(NASA)の有人アポロ計画で、月面に置き去りにされた物(人の排泄物、旗、ゴルフボールなど)は、地球上で普及している「リーブ・ノー・トレース(Leave No Trace、跡を残さない)」の考え方が月には存在していない証拠だと、研究チームは見なしている。また、アポロ由来の名所は保護されるべきだとも、研究チームは考えている。

「月の人新世」を認定することで、1959年に打ち上げられた旧ソ連の無人探査機ルナ2号から始まった人類の活動が、月面に重大な影響を与えているのを認めることになると、研究チームは主張している。ルナ2号以降、100機以上の探査機・宇宙船が月を訪れている。

英科学誌Nature Geoscienceに掲載された、今回の研究をまとめた論文によると、今後ますます多くの月探査計画が発表される状況にある中で、今こそ新たな地質年代を宣言すべき時だという。

月の人新世

「月の人新世」の考え方は、人類が地球におよぼしてきた影響の大きさを探究する「地球の人新世」に基づいている。論文の筆頭執筆者で、カンザス大のカンザス地質調査所の博士課程修了研究者、ジャスティン・ホルコムは「地球では、数十万年前であれ1950年代であれ、人新世は過去のある時期に始まったというのは、誰もが認めるところだ」と話す

「私たちは、同様に月でも月の人新世がすでに始まっていると主張しているが、人類の活動によって発生する、月を覆う顕著なハロー(拡散された月の塵)が計測可能になり、取り返しがつかなくなるまでに、重大なダメージやその認識の遅れを未然に防ぎたいと考えている」
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翻訳=河原稔

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