予約制導入による2つ目の効果が、地元住民が利用しやすくなったことだ。ダイヤモンドヘッドの頂上からの眺望は、地元に住んでいる人にとっても、何度でも訪れたくなるような素晴らしさがあるもの。おまけに周辺は住宅地であることから、地元住民もダイヤモンドヘッド登山を楽しんでいるのだ。しかし、あまりにも観光客が多く訪れると、地元住民は登山をあきらめざるを得ない。駐車場がいっぱいになって引き返す地元住民も少なくなかった。筆者自身も、駐車場が満車になって、公園の入口であきらめた経験が複数回ある。
しかし、予約制によって観光客の人数が分散され、さらに78台ある駐車場のうち約20台は地元住民用に確保されるようになった。これによって、地元住民もこれまでのようなストレスを感じることなく、気軽に登山を楽しめるようになっている。
ちなみに、ハワイの住民ならダイヤモンドヘッドの事前予約は不要で、入園料も駐車料金もかからない。観光客にとっての人気観光スポットでありながら、地元住民にとっては身近な公園のひとつでもあり、観光客と地元住民がうまく共存できるかたちになっているのだ。
ハワイの3つの州立公園でも予約制導入を検討
ダイヤモンドヘッドの予約制がうまく機能していることを受けて、他の3つの州立公園でも同様に予約制を導入することが検討されているそうだ。またハワイ州公園局では2023年、170万ドルの予算でダイヤモンドヘッドに新しい歩行者専用道を設置するほか、駐車場を設けることを計画しているという。2022年は、新型コロナの反動のためか、コロナ前以上に大勢の観光客がアメリカ本土から訪れたハワイ。もし予約制が導入されていなければ、再びコロナ前と同じように毎日のように混雑して、地元住民も観光客もうんざりさせることになっていたかもしれない。
地元住民に行われたハワイ州観光局の最新の調査で、「観光業は諸問題よりも利益をもたらす」と回答した人は52%と、年々減少傾向にある。そして「ハワイの観光業は、利益よりも問題を引き起こしている」という回答の内訳には、「環境破壊」「混雑」「生活費の高騰」「交通渋滞」などが挙げられた。
観光業が主要産業であるハワイだからこそ、地元住民の生活を守りながら、観光業と両立するかたちを模索していく必要があるだろう。