政治

2023.12.28

アンゴラのOPEC脱退が石油市場に与える影響、米中は利害が一致

アンゴラの国旗(Getty Images)

世界第17位、アフリカではナイジェリアに次ぐ第2位の産油国であるアンゴラは、割当量を巡る長期にわたる意見対立の結果、石油輸出国機構(OPEC)を脱退した。これを受け、市場はアンゴラの国営石油企業ソナンゴルが増産に踏み切ると予想。発表のわずか数時間後には、原油価格が1ドル(約142円)以上下落した。

アンゴラの前には、2018年にカタールが、2020年にはエクアドルもOPECから脱退している(訳注:インドネシアも2016年に離脱した)。

世界の石油輸出国12カ国から成るOPECは、大きな影響力を持つ連合(カルテル)を形成している。OPEC加盟国にロシアなど非加盟の産油国を加えた「OPECプラス」は、年に数回生産量を増減させることで、世界の石油供給や国際経済に絶大な影響を及ぼしている。OPECは供給を規制することで原油価格を上げようとしつつも、高過ぎない水準に保つことで需要を促し、莫大な利益を得ている。

では、なぜアンゴラはOPECから脱退したのだろうか? 最大の理由は、OPECの政治化が進んだことによる同機構の地政学的課題が、アンゴラの発展に必要な条件と相容れなくなったからだ。米中東研究所や米CNBCが指摘するように、OPECプラスは近年、石油生産枠を削減し、実質的にサウジアラビアとロシアの政治的な共同事業となっている。

減産によって原油価格が上昇するのは事実だ。だが、これは競合するアラブ諸国やイランに対する政治的な武器としてOPECを利用している財政的に孤立したサウジアラビアや、現在、原油の積み出し量が制限されているために、1バレル当たりの価格上昇に躍起になっているロシアに対して有利に働くだけだ。

多くのOPEC加盟国にとっては、この計算は成り立たない。競争や輸出量の拡大によってもたらされる増益は、原油価格の上昇より重要だ。加盟国は多くの場合、さまざまなかたちで負担を負わなければならず、現在OPECは1973年の石油輸出規制以来、最も深刻な内部不一致に直面している。

さらに、アンゴラの国内事情もOPEC脱退を後押しした。長年にわたって同国を率いてきたジョゼ・エドゥアルド・ドスサントス前大統領(1979~2017年)の長女で実業家のイザベル・ドスサントスに対する刑事捜査により、ソナンゴルの銀行口座にはわずか309ドル(約4万4000円)しか残っていないという劇的な結果をもたらした汚職計画にOPECが関与していたことが判明した。同時に、アンゴラでは変革の風が吹き、選挙は予想外の接戦となり、与党アンゴラ解放人民運動(MPLA)はかろうじて任期を延長した。英BBCや選挙の両陣営によると、選挙戦の中心にはMPLAの党員に対する無数の汚職疑惑があり、新指導部は前任者から距離を置き、政府の汚職を抑制する手段として経済の自由化を優先するようになった。
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翻訳・編集=安藤清香

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