米国の研究チームが行った実験では、情報の真偽を確かめようとインターネット検索をすると、フェイクニュースのほうを正しいと信じてしまう確率が一貫して19%高くなることが明らかになった。
誤情報が蔓延し、人々がそれを信じてしまう状況は、民主主義を直接おびやかす。このため専門家は、この研究結果の重要性を強調する。
英科学誌ネイチャーに掲載されたこの論文の筆頭著者で、米セントラルフロリダ大学・政治安全保障国際問題学科アシスタントプロフェッサーのケビン・アスレットは、2021年1月6日に米連邦議会議事堂を暴徒が襲撃した事件を引き合いに出して次のように説明する。
「政治的な影響について言えば、誤った情報を信じる傾向が強まると、政治に対する冷笑主義(シニシズム)や無関心が広がり、信憑性の高いメディアへの信頼度が低下し、二極化が進んで政治的暴力を引き起こす恐れがある」「これらは民主主義を弱体化させる」
誤った情報を信じ込んだ人々が、ワクチン誤情報のように公衆衛生を脅かしたり、再生可能エネルギー開発などの気候変動対策への反対世論を盛り上げたい利益団体に利用されたりすることもある。
アスレットらの研究では、誤情報を含むニュース記事を読ませた後で記載内容が正確かネットで検索して検証するよう奨励しなかった場合、平均30%の人が記事を真実だと判断した。ところが興味深いことに、記事を読んだ後にネット検索で真偽のほどを確かめるよう推奨した場合は、誤りのある記事を真実だと評価した人は約36%に上った。
なぜだろうか。
要約すると、すべては使われる検索用語と検索エンジンが提供する情報の質にかかっている。
「確かめようとしている誤情報の主張を裏づけるような質の低い情報源に接すると、誤情報を信じやすくなるようだ」とアスレットはいう。「誤情報に使われている特徴的な用語を検索クエリに用いると、低品質な検索結果にさらされ、データボイド(データの空白)に放り込まれる」
言い換えれば、検索すればするほど先入観や偏見が増幅される可能性があるのだ。「データボイド」とは、検索結果が非常に少なく、虚言、誤情報、偽情報が検索上位に表示されてしまいがちな検索クエリのことをさす専門用語。こうしたデータの空白を利用して巧妙なメディア操作を行えば、多数の人をプロパガンダにさらすことができてしまう。