最終的に可決された法案は、政府案よりも移民に対して大幅に厳しい内容だった。
失業中の外国人が家族手当や介護手当を受給するにはフランスに5年間、就労中には30カ月間、滞在していることを証明しなければならないなど社会保障給付の条件を厳格化。同国内で外国人から生まれた子どもは自動的に同国の国籍を取得することができなくなり、16歳から18歳までに申請が必要になった。
政府の当初案には、飲食など人手不足の職種に就く非正規労働者の正規化を簡素にしようとの狙いがあったが、ことのほか厳しい内容になったことで、与党側には反対や棄権する議員が相次いだ。しかし法案はRNが賛成に回ったことで可決に結び付いた。
これを受けて、ルソー保健・予防相が辞意を表明。これに対して、テレビ番組に出演したマクロン大統領は「領土に不法入国する人々の流れに対応しなければならない」と述べ、「我々に欠けていた盾」などと新しい移民法を擁護する姿勢を示した。
だが、フランスのメディアは「危機に直面した政府が何事もなかったかのように振る舞った」(リヨンの新聞「ル・プログレ」)などと冷ややかに受け止めている。
左派勢力も猛烈に反発。地元メディアの「フランス・アンフォ」によれば、左派政党「不服従のフランス」のマキシミ議員はX(旧ツイッター)上で、マクロン大統領を「ルぺニゼ」などと強く非難した。
「ルぺニゼ」とはマリーヌ・ルペン氏の父で、移民の排斥などを強硬に主張した旧・国民戦線創始者のジャン=マリー・ルペン氏の思想に近づくことを意味するフランス語である。
同じく、左派政党「エコロジスト」のルーカス議員も「極右の、極右による、極右のための、外国人を取り扱う法案などありえないと思っていた」などと強烈に皮肉った。