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2024.01.09 11:15

日本一詳しい「これからの大麻の話」大麻取締法改正への10の提言

谷本 有香

使用罪の創設

三つ目の柱が施用罪の適用です。

現行の大麻取締法では所持罪しかなく、使用罪はありません。これは、法律制定にあたり、当時参考にした1937年制定の米国マリファナ課税法に使用罪がなかったからという歴史的な背景や大麻栽培者の所謂「麻酔い」により逮捕起訴することを防ぐことを考慮しそのような形になったと認識しています。昨今は、使用罪がないことが大麻使用の引き金になっているという調査結果や、同じく大麻を乱用しても「使用は認められるが所持はしていない」ことで逮捕に至らない不公平なケースが頻発していると推察します。

また、大麻栽培者の「麻酔い」については調査の結果現代においてはないとされております。

今回の法改正の大きな目的の一つが、大麻を利活用するものと違法とするものを明確に分けることです。

日大のニュースやヒップホップの方の逮捕のニュースで認識されている通り、若年層での大麻の違法使用が増加しています。

こういった状況の中、違法な大麻成分は麻向法や薬機法の指定薬物に収載する一方、利活用できる医薬品製剤は薬機法で承認し、違法成分を含有しないCBDなどを明確に合法としていくものです。

使用罪を新たに創設するというよりは、THCなどを麻薬とするという法の建付け上、他の麻薬成分と同様の対応となるよう整備されたという認識です。

「使用罪創設」という言葉が独り歩きしておりますが、正確ではなく、法律的な建付け上、これまで合成THC等を麻薬及び向精神薬取締法にて取り締まっていたため、天然の大麻草由来の麻薬成分も同様に麻薬及び向精神薬取締法にて収載することを行ったことで、大麻に対しても施用罪が他の麻薬同様自動付帯したという認識です。

大麻合法化(嗜好も含めて)論者からは、海外で合法となっている国で大麻を使用した方の逮捕を懸念する声があります。

しかしながら、先日行われた厚労委員会において、合法国において大麻を使用した方は、他の麻薬と同様に国外犯処罰規定が適用されないので、逮捕することは想定していないと厚生労働大臣から答弁がありました。また施用罪単体での逮捕は運用面を考えても難しく、所持とのセットやこれまでの捜査において使用は認められるが所持が認められずそれ以上捜査ができないといった状況の改善に使われるのみで運用は限定的になると思われます。
 
以上の3点が主な改正点となります。
(出典:赤星栄志(2024)75年振りに改正案が可決!大麻取締法はどうかわった?.農業経営者24年1月号より一部引用)

(出典:赤星栄志(2024)75年振りに改正案が可決!大麻取締法はどうかわった?.農業経営者24年1月号より一部引用)


仮に法が改正されると公布から施行まではおよそ1年程度なのではないかと思っております。THCの限度値や細かな内容は法改正案には書かれず、今後政令などで示されることになります。
その間に、私が必要だと思われる省令やガイドライン、業界ルールについて話します。

今後の展望

私が経営している企業の株式会社ワンインチはCBDスタートアップ企業です。今回の法改正でTHCの基準ができることは大きく企業の運営に影響します。これにより市場は広がる可能性を秘めていますが、同時に大きな危惧を覚えています。

具体的なシナリオと共に、今後必要であると思うCBDに係るルール策定についてお話させていただきます。

大きな懸念は、CBDの製品に関するルール不備による事故からの規制です。

現在、CBD製品に関する包括的なルールは存在しません。あくまで現行の大麻取締法や薬機法、景表法等に則って製品が販売されています。

しかしながら、市井にあふれるCBD製品は、表示をとってみても薬機法違反や景表法違反が横行しています。

また、CBD製品に限定された表示ルールは存在しません。

これにより、例えば年齢のルールや、CBD含有量のルール、一日のCBD摂取の上限ルール、用法用量のようなルールが存在しません。一方、用法用量を定めてしまうと、医薬品的な利用にあたるため、食品では認められなくなりますが、一日の摂取量の目安についても共通のコンセンサスがありません。

CBDはアメリカでは医薬品のみ法的に定義されています。そこには副作用として傾眠の作用があります。

例えば、運転前にCBDを摂取し傾眠作用が発現し、大きな事故につながることも起こりえます。

他にも、医薬品として認められているため、他の薬との相互作用があります。こちらでも事故が起こりえないとは断言できません。

これらの状況下で法改正後に市場が拡大して事故などが起こると、闇雲に広がり、ますと今後、規制によりCBD製品の販売禁止なども可能性は低くないと思っております。

また、上記のてんかんの医薬品も現在治験が進んでおります。こちらが正式に承認されますと食薬区分により一般CBD製品は販売ができなくなる可能性があります。一般に医薬品として認められた成分は医薬品での流通が基本という原則があります。

食薬区分においては「専ら医薬品」と「非医薬品」とがあります。こちらの非医薬品に該当する場合には食品等での利用も可能ですが、専ら医薬品に収載されますと一般製品では流通できなくなります。

その区分けの中では、現在CBDは、国内外での食経験などがあり、成分自体としては非医薬品に入る可能性は十分可能なのですが、事故等によりイメージの悪化、安全管理の世論の要請などが強くある場合は、厚生労働省は専ら医薬品として流通を厳しく管理するのではないかと危惧しています。

そうならないためにも、業界ルールにより健全な市場を作る必要があると考えます。

ここからは健全な市場創出のために必要だと考える業界ルールについて説明します。
次ページ > CBD製品に係る業界ルールについての提言

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