映画

2023.12.28 12:00

ミッキーマウスがついに「著作権切れ」、2024年1月1日から オリジナル版が対象

日下部博一
2月に1652館で公開された『プー あくまのくまさん』の全世界興行収入は494万ドル(約7億円)だった。この映画のプロットは、殺人鬼のプーさんと親友のピグレットが、大学の学生や、彼らの人間の元仲間であるクリストファー・ロビンを恐怖に陥れるというストーリーだ。映画評論サイト「Rotten Tomatoes」での観客得点は50%、批評家得点は3%だった。

当初、ミッキーマウスとミニーマウスは1984年にパブリックドメインになる予定だったが、1976年に制定された著作権法により、すべての著作権の保護期間が75年に延長されたため、『蒸気船ウィリー』の著作権は2004年に失効することとなった。だが、さらに1998年、米議会は後に「ミッキーマウス保護法」と呼ばれる別の法律を可決し、著作権の存続期間をさらに20年延長した。このため、現在でも95年ルールが有効となっている。正式には「1998年著作権延長法」(1998 Copyright Extension Act)と呼ばれるこの法律は、ディズニーをはじめ、アメリカ映画協会(現モーション・ピクチャー・アソシエーション)やジョージ・ガーシュウィンの遺産管理人などの、自分たちの財産を守ろうとする人々の働きかけによって成立したものだ。

『蒸気船ウィリー』は1928年に公開され、ミッキーマウスとミニーマウスを世に広めた。これは映像と音声が同期した世界初のアニメーション作品であり、特に技術的な進歩で高く評価され、その時代に最も人気のあるアニメーションのひとつとなった。ニューヨーク近代美術館によれば、批評家たちは『蒸気船ウィリー』で見られるミッキーを、チャーリー・チャップリン、ダグラス・フェアバンクス、フレッド・アステアの合体だと考えていたという。

ディズニーを著作権訴訟で有名にした訴訟のひとつは(大げさだという意見もあるが)、1970年代にミッキーを主人公にした二作の漫画を出版したダン・オニール率いる漫画家グループ 「エアパイレーツ」 に対して、ディズニーが即座に起こしたものだ。そのコミックはオリジナルのミッキーをパロディ化し、セックスやドラッグを含むさまざまなシチュエーションで描いた。数年にわたる裁判の末、ディズニーは勝訴し、現在81歳のオニールは二度とミッキーマウスを描かないことに同意した。彼は先週、もしミッキーマウスの絵を描けば、今でも19万ドル(約2700万円)の罰金を科される可能性があると、Variety誌に語っている。

シャーロック・ホームズのような伝統的なキャラクターの場合は、パブリックドメインになっても、すべての種類の訴訟を避けることができるわけではない。たとえばNetflix(ネットフリックス)は2020年に、アーサー・コナン・ドイルの遺産管理人から、ホームズの描写に関して訴えられた。訴訟が起きた当時、ホームズは初期の作品がパブリックドメインとなっていた。Netflixの2020年の映画『エノーラ・ホームズの事件簿』では、ホームズが世間で知られている分析的な天才とは異なり、より暖かく感情豊かな人物として描かれていたが、ドイルの遺産管理人は、こうしたキャラクター特性は最後の方の作品になってからはじめて登場するものであると主張。それらの作品は映画がリリースされた時点ではまだ著作権が保護されていた。だが、これらの著作権も2023年に失効し、最終的に訴訟は棄却された。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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