バイオ

2023.12.27 17:00

生物医学実験に使われたサルは、その後どうしているのか?

ヨザル、別名フクロウザル(Aotus nancymaae)(Getty Images)

南米コロンビアのアマゾン地域に住むサルたちは、数十年にわたって生物医学研究に用いられ、それから野生に戻されてきた。そして研究者たちは今、その後に何が起きているのかを知りたがっている。

11種のヨザル(米大陸で唯一の夜行性霊長類)の大部分が、農業、開発、伐採などによる森林破壊によって、IUCN(国際自然保護連合)の絶滅危惧種リストに「減少」あるいは「情報不足」と記載されている。またそのサルたちは、食用の野生動物肉として狩猟されたり、野生生物取引や生物医学目的のために捕獲されている。

コロンビア・アマゾン地域レティシアを拠点とする草の根非営利組織であるFundacion Entropikaのディクターを務める霊長類学者、アンジェラ・マルドナドは、コロンビアのある研究室では40年近くマラリアの研究のために野生のヨザルを使用している、と語った。

「研究目的に使用された後、サルたちは野生に戻され、追跡調査はされていないため、そのことが生息個体の置換や交配を引き起こし、人畜共通感染症伝播の危険性があります」と彼女は語り、その結果、野生のサルたちが通常では見られない病気に感染する恐れがあることを付け加えた。

マルドナドは、2009年に研究チームと共にAotus Project(ヨザルプロジェクト)をスタートし、マラリア研究のためにヨザルが捕獲された地域の野生個体数を調べ、それ以外の地域と比較することによって、ベースライン情報を得るためのデータを集めた。

「2018年、私たちは人畜共通感染症に焦点を合わせて遺伝および寄生虫の研究を開始しました。現在はゲノム編集ツールを用いて新しい研究分野にも対象を拡大しています」と彼女は語り、予備研究において、野放しのヨザルにフラビウイルスとヘルペスウイルスが存在する分子的証拠が確認されたことを付け加えた。それまで、これらのウイルスはアマゾンでは報告されていなかった。

同組織は、野生生物観察観光の支援も行っており、かつてヨザルの取引に関与していたコミュニティが、サルを観光写真の道具として使うことをやめさせる運動を手助けしている。

2017年にマルドナドは、コロンビア・ペルー国境沿いで行われていたヨザルの違法取引に、法制度を使って取り組んだことを認められ、英国の野生生物慈善団体、ホイットリー自然基金から7万ポンド(約1260万円)が贈られた。
次ページ > 保護にかける情熱

翻訳=高橋信夫

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事