将来宇宙輸送システムは、乗客を乗せて地球軌道を周回するスペースホテルへの送迎をする単段式宇宙往還機の建造を2030年代中に予定している。客船版スペースシャトルといったところだ。そのエンジンは、水素とメタンと酸素の3つの推進剤を使用するトリプロペラント方式というもの。大気圏内ではメタン、大気圏の外では水素と推進剤を使い分けることで、水素燃料タンクを小型化でき宇宙船を軽量化できる。今回の燃焼試験では、ひとつのエンジンで水素とメタンの燃焼モードを5秒ずつ連続的に切り替えることに成功した。これは日本では初めてのこと。これで、宇宙旅行実現へ一歩近づいたわけだ。
さて、将来宇宙輸送システムは、革新的な宇宙輸送システムの事業化を目指し、2022年5月に創設されたばかりのスタートアップだが、その要となるロケットや宇宙船などの輸送システムを迅速に開発する必要がある。そこでは「アジャイル型」の開発が大きな力になる。
これまでの技術開発では「ウォーターフォール型」が主流だった。仕様が固まっていて途中変更がないことを想定し、大勢で手分けして開発を進めるというものだ。しかしこの方式は柔軟性に乏しく、開発途中での仕様変更が当たり前の革新的技術の開発には向かない。そこで、少人数のチームで臨機応変に進められるアジャイル(敏速)な開発方法が注目されている。
将来宇宙輸送システムは、徹底したアジャイル型開発を実現するために、独自の研究開発プラットフォーム「P4SD」(Platform for Space Development)を整備した。開発に関わるすべての過程をデータ化してクラウドで一元管理することで、開発に関わるすべての人が、いつでもどこでも同じ情報を共有でき、確実なアジャイル開発が実現する。今回のトリプロペラント式エンジンの燃焼試験は、エンジンともに、P4SDの有効性も実証された形になる。
同社の代表取締役社長兼CEOの畑田康二郎氏は「今後、多くのパートナー企業の協力を得ながら、これまでにない加速度で、将来あるべき宇宙輸送システム実現に向けて邁進いたします」と話している。
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