国連薬物犯罪事務所(UNODC)の報告書によると、ミャンマーは2023年に推定1080トンのアヘンを生産した。これは前年の推定生産量790トンと比較すると36%もの急増であり、同国のアヘン生産量としては2001年以降で最大となる。
ミャンマーでは2021年に民主的に選出された政府が軍によって追放されて以来、ケシの栽培が大幅に拡大している。同国では軍事クーデターが引き起こした内戦の暴力と政治不安により、ケシ栽培に携わる人が増加。現在ケシ栽培に使用されている土地は約4万7000ヘクタールに上り、昨年より18%増加したと推定されている。
一方、アフガニスタンではタリバン政権がケシ栽培と麻薬生産を厳しく取り締まっているため、アヘン生産量は1年間で推定95%も激減した。これにより、ミャンマーは今年、歴史的にアヘンの主要生産国だったアフガニスタンを抜き、世界最大の生産国となった。
ミャンマーの現状について、UNODCのベネディクト・ホフマン副地域代表は「現在の状況では、農村は不安と経済的苦難の板挟みになっている。特に法の支配がない状況で、代わりになる作物がなければ、アヘンに目を向ける人はさらに増えるだろう」と述べた。また、同事務所のジェレミー・ダグラス地域代表は、民族グループと軍との間で激しい戦闘が続いているシャン州や国境地帯での紛争激化によって、ケシ栽培がさらに加速する可能性を指摘している。
アフガニスタンは長年にわたり、世界有数のアヘン、ひいてはヘロインの生産国だった。同国は今年も推定330トンのアヘンを生産したが、タリバン政権の下で大幅な減産が続けば、世界的なアヘン不足に陥る可能性がある。
ケシ科の植物から抽出されるアヘンはヘロイン製造の主原料だが、それ自体が中毒性の高い麻薬だ。アヘン剤とは、痛みの治療に一般的に使用されるモルヒネやコデイン、フェンタニル、ヘロインなど、依存性の高い薬物の広範な種類であるオピオイド系の天然薬物のグループで、世界中で社会問題、経済問題、そして健康問題を引き起こしている。報告書は、世界的な供給不足によってアヘン価格が上昇し、さらには生産が促進される可能性があると警告している。
報告書は、2023年におけるミャンマーの「アヘン経済」の規模を10億ドル(約1400億円)~25億ドル(約3600億円)と見積もっている。アヘンとヘロインの国内消費と輸出の両方を含むこの数字は、同国の2022年の国内総生産(GDP)の約2〜4%を占める。
(forbes.com 原文)