届け!日本の生鮮食材。物流改革で世界に美味を

杉山亜美|SECAI MARCHE代表

海外のスーパーでは、日本産の生鮮食材は輸送コストがかかり日本の数倍の価格で販売されることが多い。「おいしい食材を適正価格で海外に届けたい」。日本と東南アジアをつなぐ生鮮食材産直サイト「SECAI MARCHE(セカイマルシェ)」はそんな思いから生まれた。共同創業者の杉山亜美はマレーシアで日本茶の輸入・飲食業立ち上げ経験をもつ。異国でたったひとりでの起業は多くの学びをもたらした。

最初の課題は、日本食材の値段の高さ。商社などを介しコストがかさむうえ、現地の飲食店はサプライヤーを通じた大ロットでの一括輸入に頼るしかない。杉山はほかの飲食店と共同で日本の農家から食材を小ロットで仕入れ、資材・備品等を一緒に運びより安く輸送する手法を構築した。

東南アジア特有の課題も杉山を悩ませた。小口冷蔵輸送は日本では一般的だが、東南アジアでは未発達。不安定な温度管理のため輸送量の約半分は廃棄され、そのコストは販売価格に転嫁される。日本茶事業が軌道に乗ってきたころ、同様の課題解決に取り組んでいた日本のコンサルティング会社から声がかかり、同社に転職。そこで元農業生産法人の経営経験を持つ早川周作と出会い2018年にセカイマルシェを日本とマレーシア2カ国で立ち上げた。

マレーシアの農家にとっても流通は悩みの種だ。杉山は創業から数年間毎週のようにマレーシア農村部に足を運んだ。「現地農家はトマトだけでも何種類もつくっていますが売れるのは大口出荷できる一般的な商品だけ」。セカイマルシェは日本の食材に絞らず現地の農家の商品も取り扱う。「海外で事業をさせてもらっている以上、現地にきちんと還元したい」。現在は輸送範囲を首都圏内に収め飲食店への配送も自社で手がけることで、日本や現地の多様な食材が効率よく届けられるように。創業5年で東南アジアの1000以上の店舗へ食材を運ぶECへ成長した。

「生鮮食材が適正価格で流通する社会と、生産者も輝ける新しいインフラをつくりたい」


すぎやま・あみ◎米大学で健康経営を学んだ後、日本の健康経営支援企業に就職。転職先の支援のもと2015年にマレーシアで日本茶輸入・飲食業「TEA PRESS」を開業した後、デロイト トーマツ コンサルティングで日本産農産物の輸出拡大プロジェクトにかかわる。18年、プロジェクトを協同した早川周作とともに独立、SECAI MARCHEを創業した。

文=菊池友美 撮影=リチャード・ハンフリーズ

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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