『Spider-Man 2』開発費は430億円 持続不可能な大作ゲーム、ソニーの未来に暗雲

日下部博一
これはソニーに限ったことではないが、特に同社にとって大きな問題であることは明らかであり、この文書から若干の危機感がうかがえる理由でもある。ソニーは、批評家からも高く評価される大作シングルプレイゲームの開発で知られている。しかし、ゲーム賞を受賞したとしても、必ずしも収益の増加にはつながらない。またソニーは、独占タイトルを発売時にPS向けにしか販売できないことや、購入後の継続的な収益が望めないこと、コストが膨れ上がっていることから、非常に危うい状況に陥りつつあるように思える。

これを踏まえると、ソニーが最近、ライブサービスゲームに力を入れていることは、いくぶん理にかなっているように思える。ただ、この計画は全くうまくいっていない。開発を予定していたライブサービスゲーム12本のうち、6本が無期限延期となった。さらには、その中でも最も注目度が高かった『The Last of Us』のオンラインゲームは、開発が完全に中止された。さらに、ソニーが36億ドルで買収したライブサービスゲーム開発企業のBungie(バンジー)では最近、運営する『Destiny 2』のプレイヤー数が激減し、売上高が目標を下回る状況が続いている。

AAAゲームを作っている会社はソニーだけではなく、これはゲーム業界に共通する問題だ。例外として、こうしたモデルを続けられるシリーズも一部存在する。例えば『Grand Theft Auto VI』(GTA6)は、どんなにコストがかかろうとも、発売と同時に10億ドルを稼ぎ、その後も『GTA6 Online』からさらに数十億ドルの収入をもたらすことだろう。ただし、他の大作ゲームの大半はそうはいかない。

今回の記事ではソニーを取り上げたが、これはマイクロソフトについても重大な問題となる。マイクロソフトもまた、非常に大規模なシングルプレイゲームを作りつづけているが、販売本数はソニーの大作ゲームには遠く及ばず、その代わりに、こうしたゲームをサブスクリプションサービス「Game Pass」の会員増加を促すために使っている。マイクロソフトは「Game Pass」は黒字だと主張しているが、AAAゲームの予算が『Spider-Man』シリーズのように2倍、3倍になったらどうなるのだろうか?

現状を打開するために具体的に何ができるのか、何がなされるのかはわからないが、これらのゲーム開発の規模やコストを縮小すると同時に、プレイヤー側の期待も下げる必要があるだろう。プレイヤーの新作ゲームに対する要求は高まる一方であり、グラフィックやプレイ時間、マップの広さなどが少しでも期待を下回れば、許しがたいダウングレードとみなされる。何かを諦めなければならない。無理に無理を重ねた今、このモデル全体が崩壊しつつある。

forbes.com 原文

翻訳・編集=遠藤宗生

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