交渉力
女性は交渉の席で特有の困難に直面する。米シンクタンク女性政策研究所(IWPR)によると、2021年の米国女性の年収中央値は男性の約83%にとどまった。その理由の一端は、交渉の際の男女格差にあるかもしれない。ハーバード・ロースクールは、女性にも交渉の訓練や経験によって恩恵を得る権利があると指摘。「男女の成果格差は、交渉経験を積むにつれて縮小する。特に女性は、交渉のテーブルにつく時間が長くなるほど、より好ましい経済的成果を達成する傾向があることが示唆されている」との研究結果を紹介している。
ポーカー・パワーは交渉術を教える。その練習方法についてライドンは「毎回の手役をすべて交渉とみなす」と説明する。「カードが配られるたびに、自分の手札は何か、相手はどのカードを持っているだろうかと自問する。それは交渉の全容だ。ギブアンドテイクであり、新しい情報を知ることで得られる新たな視点であり、最終的に持てるカードすべてをテーブルの上に置いて、昇給や昇進、新規顧客や新規取引先など、何もかもを交渉によって獲得しようとすることにつながる」
「ポーカーが魅力的なのは、女性に限らず誰であっても、戦略ゲームや対戦ゲームに慣れていたり、複雑な人生を乗り越えてきたりしていない限り、勝ち方がわからないだろう点だ」
リスクテイク
リスクを取ることは、女性のキャリアアップにおいて重要なカギとなる。コンサルティング企業KPMGは2019年に発表した報告書「Women’s Leadership Study: Risk, Resilience, Reward(女性のリーダーシップ調査:リスク、回復力、報酬)」で、「現在ホワイトカラーの職場でフルタイム勤務中の大卒女性2000人余のうち55%が、キャリアにおいてリスクを取る人のほうがより早く出世し、個人的な成長を達成し、同僚から高い信頼と尊敬を得られると考えている」と指摘している。ライドンは言う。「初めて手持ちのチップ全額をテーブル中央に押し出すときは、死ぬほど怖い。インターンだろうとCEOだろうと、ポーカーテーブルでリスクを取ることをためらうのは同じだ。この態度を私たちは変えたい。女性にポーカーで勝つことに慣れてもらい、もっと大事なのは負けることにも慣れてもらう。なぜその役で勝てなかったのかを理解することで、リスクを取ることに慣れていく」