官民連携を通じて関係人口づくりや観光促進にも取り組み、3年後には西川町を訪れる人を2倍の100万人にするという目標を掲げる。小さな町の生き残り策を探る。
町が迎える2030年の限界点
クレイ勇輝(以下、クレイ):今回、企業版ふるさと納税の“聖地”として僕が注目したのは山形県の西川町(にしかわまち)です。天童市と鶴岡市の間に位置する西川町は、面積は山形市とほぼ同じです。ただ山形市の人口が約24万2000人なのに対して西川町は約4700人。しかも人口における65歳以上の高齢者の割合は46.5%と、人口減少と少子高齢化が進んでいる自治体です。ところが企業版ふるさと納税の寄附額の動きが面白くて、2021年度は200万円だったのが、2022年度には3730万円と約18倍も増え、今年はさらに上回る見込みだそうです。この大きな変化の秘密を知るために、菅野町長にお話を伺いたいと思います。
いきなりなのですが、町長、いま45歳と、とてもお若いですね。
菅野大志(以下、菅野):いえいえ。でも首長は少しずつ若返りが進んでいる、そう感じます。全国には町村が926あって、そのうち49歳以下の首長は67人です(11月時点)。私は高校卒業まで西川町で過ごして大学進学を機に上京しました。高齢者が多い町では、そういう人間が町に戻って首長選に出ても、支持を得ることは簡単なことではなかったのですが。
クレイ:それでも2022年4月の町長選挙で当選されたのは未来を託されたということだと思いますが、財務省、そして内閣府で仕事をされていたお立場から町長になったのはなぜですか?
菅野:内閣官房にいたころの2021年に地方創生の限界点を調査したんです。そこで出た結果は「人口4000人以下で65歳以上が45%を超える自治体は将来的な再生が極めて困難になる」というものでした。そういう自治体は、15歳~64歳の生産年齢人口を増やすことがほぼできなくなる。これには衝撃を受けました。西川町は2030年に人口4000人を割り込む計算だったんです。
だから、2022年の町長選で決断しなければ間に合わないと思いました。
クレイ:町長に就任されて何をしようと考えましたか?
菅野:まずは稼げる自治体、持続可能な自治体を目指しています。そのために「関係人口」を増やしたい──これは住民でも観光客でもなく、西川町のために何かに参画してくれる、そういう人を1人でも増やすことを考えました。
その入口として掲げたのが、西川町を知ってもらうための、観光客100万人の目標です。