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国内

2024.01.03 14:00

経営者として一皮むけた真の信頼関係

(写真左)投資家 井上加奈子 NEXTBLUE(同右)起業家 バテク・コラチ カルクル

ドイツ出身のエンジニア兼デザイナーであるバテク・コラチは2019年12月、複合現実(Mixed Reality)分野のスタートアップとしてカルクルを設立した。同社は、立体的な聴覚体験ができる空間オーディオのアプリ「KALKULAURA」や、位置情報とARホログラムを組み合わせた空間メディアを開発。例えば、特定の地理空間上で同社アプリからカメラを起動すると、アーティストのARホログラムと同時に立体的に楽曲が再生されるなど、新しいユーザー体験を提供。イベントやマーケティングなど、企業向けソリューションとしての展開を進めている。

独立系VCのNEXTBLUEは、20年12月にカルクルが実施したシードラウンドから投資し、支援している。なぜ同VC代表パートナーの井上加奈子は投資したのか。


井上:出会いは、私が前職のVCに勤めていた2018年ごろ。当時のカルクルはワイヤレスイヤホンを開発していて、そのときは出資を見送りました。ただ、前職の同僚で、今はNEXTBLUEのパートナーであるヴィンセント・タンが、その後もバテクとやりとりをしていて。それで20年の夏に、事業をピボットしてソフトウェアで勝負をしていくと聞き興味をもちました。

バテク:実はヴィンセントとは、もともと表参道にあるレストランのオーナーを通じて知り合った仲で、たびたび事業の相談をしていたんです。

井上:投資先を選ぶうえで重視しているポイントは、ビジョンとチーム、そしてタイミング。どんなに優秀な起業家でも、マクロ環境に適合していなければ勝つことは難しい。最初に出資しなかったのも、イヤホンはレッドオーシャンな市場で、競合関係を見ても、アップルが参入してくることが予想されたから。一方、空間オーディオのソフト領域はまだプレイヤーが少なくて、市場拡大が期待できました。そこに、ビジョナリーなバテクと、優れた技術をもつ共同創業者兼CTOのメティ・ハマディという力強いチームが揃っていたので出資を決めました。

バテク:イヤホンを開発していたときから現在まで、私たちのビジョンは一貫しています。ただ、世の中がWeb2からWeb3に移行し始めたので、アプローチの仕方を変えたのです。Web3で構築される仮想社会では、将来的に今の現実社会とまったく同じような体験ができるインフラがつくられていくと思っています。コンテンツ産業におけるWeb2とWeb3の大きな違いは、2次元だった画像や音声などを立体的な空間で感じられるようになること。しかし、その世界はまだ確立されていない真っ白な状態。私たちの役割は、現実社会とデジタルの境界線をブリッジし、うまくインテグレートしていくことなのです。こうしたビジョンに共感し、グローバルな目線をもつNEXTBLUEはとても頼もしい。
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文=眞鍋 武 写真=平岩 享

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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